春に凪ぐ青【単行本版】
」のレビュー

春に凪ぐ青【単行本版】

依波きさ

表紙に惹かれた方は購入してほしい

ネタバレ
2025年8月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙に惹かれて購入しました。装丁と物語がここまで一致する作品もなかなかないと思わせるくらい魅力的です。なにより、終始、ストーリーの鍵にもなる瞳が丁寧に描かれていて、複雑な心境を緻密に表現される作者さんだなと感じました。

家族との不和や幼少期のトラウマ含め、颯和くんが人との距離を置く理由はそこそこ重いのですが、恐らく本人はそのあたり諦観や虚無に変わっていて、悲しさより翳りとして颯和くんの一部になっているように思います。
その翳りへの向き合い方が作中通して穏やかながら切なくて、でも過去よりも「現在」を大切にしているからこその切なさはどこか心地よさもありました。

形は違えどお互いに人との距離を置いて過ごす2人が、瞳のこと、家族のこと、得意なこと、いろんなきっかけでゆっくり心を寄せ合う過程が本当にかわいらしいです。特に颯和くんの背中を押されて行動に移せる素直さ、構いたくなったり独占欲がわいたりする気持ちもわかるな…!と頷いてしまいます。

タイトルにも「凪」とあるように、とても穏やかな作品ですが、読後の満足感がすごいです。登場人物たちもキャラクターというより「人間」なんだなと思わせる細かい表現が素敵でした。ほかの作品も読んでみたいですし、これからのご活躍も楽しみです。
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