このレビューはネタバレを含みます▼
反転してネガとポジ。悪逆宰相閣下は、自らその悪逆っぷりを土壇場で根本からひっくり返す。正に、正に「毒を食らわば皿まで」なのだ。悪役令嬢である我が娘の断罪シーンで、この世界がゲームの世界だと覚醒したアンドリムは、王家に、自身の破滅に、真っ向から逆襲を試みる。そも。彼は覚醒前から根回しを徹底的にしていたと見えて。余裕綽々なんである。破滅に追い込まれる筈の、不正や違法薬物・睡藻の違法取引、それで蓄えた金銭も王家の不正にすり替えて、現王位継承者やその側近共の追訴を逃れ、悪役令嬢と誹られた娘・ジュリエッタの名誉を回復。そして。悪逆宰相の元に行っていた全ての事象は全て国を愛し、国を護る為に泥を被っていたのだと「思わせる」事に成功するのだ。ここまで、胸がすく様な鮮やかさ。ネガポジ反転。悪逆閣下は悲運のヒーローとなってしまう。ああ、アンドリムの思い通りに行き過ぎて、どこかで綻びるんでは?!とハラハラしてしまうんだが、3巻を経て、今の所上手く行っている。ああ、このまま破滅を逃げ切り、幸せになって欲しい!と、ヒールである筈のアンドリムを応援せずにいられない!清廉な騎士団長である筈のヨルガもアンドリムの儚い色香にコロッと堕ちる。どころか自身の正義感を覆す程に執着して行くのも良き。3巻の瞳孔真っ黒のヨルガ!いいね!いいねー!悪役令嬢転生モノが好きな私は2巻のシグルドとジュリエッタが結ばれるところも好き。BL内で男女間恋愛はあまり頂けない方なんだけど、これは別腹!終始緊張を強いられるこの物語の中で、ホッと出来る穏やかで温かい挿話になっているのが良き。それすらも、アンドリムの手のひらの内だとしても。彼が罪なき娘と息子に幸せになって欲しいと願った真心だけは真実だから。この物語がまるで史実の様に細密に描かれているのも素晴らしい。絵の麗しさは言わずもがな。
ジュリエッタを破滅に追い込んだ奴等には徹底的な逆襲を!アンドリムには温かいラストを。願ってやみません!!