Don't talk to me
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Don't talk to me

ぞう工場

間合いが好き

ネタバレ
2025年8月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ この作品ですごく共感したシーンが、P17の2コマ目、アナログな資料作り(笑)つい最近仕事で似たようなこと思ったのでにやけてしまった。

山田(受)は、自己肯定感低めで、「俺なんか」とか言っちゃう、過去の恋愛の失敗から臆病になっているサラリーマン。でも仕事ぶりは真面目で考え方も一本芯が通ってて、そんな目立たない受けの魅力を、キラキライケメン攻めの瀧宮(といっても彼にも彼なりの葛藤だとかがあって、キラキラしてるだけではない)だけはわかってて、実は惚れててぐいぐい迫るという、よくある設定。
私は「過去の恋愛の失敗で臆病になる」とか、「大人になると素直になれない」とかいうBLのお決まりの葛藤がどうにも腑に落ちなくて(大人になると、恋愛よりもっと大事なものができてそのせいで悩むならまだわかるんだけど)、なんでこのタイプの葛藤が、多くの作品で濫用されているのか不思議でならないのだが、本作もある意味では私のあまり好きではない葛藤濫用作品といえばそうなのだけれど、他の作品にはない魅力もいろいろあった。
例えばP14「勘弁してくれ俺は惚れっぽいんだよ」のモノローグとか、ここで自分の惚れっぽさを素直に自覚してる山田ってなんかいいなと思ったし、アナログな資料作りとか、こっそり帰ろうとするとことか、P22~23の、瀧宮の部屋に来てご飯食べて山田が押し倒されるまでの流れとか、P130の「どうしてそこへ座るんでしょうか」のくだりなど、説明が難しいのだが、テンポというか間合いというかセリフ選びが絶妙で、妙にくすっとさせられるようなところがあって、このちょいちょい挟み込まれる絶妙なコマと絶妙なテンポのおかげで、ネガティブ地味男が、キラキライケメンに愛され救われるというよくある話が、それだけで終わることなく別の色合いを帯びて何か惹き付けられるものがあった。

また、絵柄はちょっと不安定で、キスシーンでの口と口の重なりが不自然に見えるところもあったけど、肉体の厚みは好みだし、線にほどよい強さと雑味があり、瀧宮の表情ですごく魅力的なものもあったし、特にバックからの攻め方は腰の入り具合とかがとてもエロみがあってよかった。P143一コマ目のまぐわいは、アングル、ボディー、線の感じとも色気と強さがあってよきよき。
初めて読んだ作者様だったけど、もっとコメディー色強めのお話とか読んでみたいかも。(たぶんププ?)
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