愛と欲望の螺旋 <新装版>
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愛と欲望の螺旋 <新装版>

冬森雪湖

美しくも哀しい昼ドラのような世界観

2015年1月12日
安かったので興味本意で読み始めたら、あまりの話の重厚さに止まらなくなりました。
続きが気になって仕方なく、睡眠を削っていっきに購読してしまいました。
最初はいきなり義理の兄にレ○プされてしまい、よくある薄っぺらいTLかなと思ったんですが
全てにしっかりと理由があり、ちゃんと明かされていくので、話がしっかりしてる分安心して続きを購入できました。
ただ、あまりにも嫌な予想が当たってしまうドロドロな内容に、胸が苦しくてたまらなかったです。
だけど苦しいながらも読まされてしまう、これだけ感情移入させられて登場人物の幸せを祈ってしまうようなシナリオは本当にすごいですね。
安っぽい薄っぺらいTL買うくらいなら絶対こちらをオススメしたいです。

ただ、可愛らしい軽く楽しめるような内容を求める方にはオススメできませんね。
苦しみの底から彼を救う事なんてできるのか…中盤主人公と共にカウンセラーのような気持ちになっていました。
でも後味悪いラストではなく、彼らの成長がうかがえて未来の見れるものだったので良かったです。
重いシナリオだったけど、彼の気持ちの救われていくような描写が丁寧で、納得のできるものに仕上がってるのがこの作者さんすごいなーと思わされました。
体を繋ぎあわせることが互いの精神バランスを保つ手段だったり、愛情表現だったりしたので
Hシーンの描写も細かく丁寧で、一話一話に必ずと言っていいほど入ってくるのでそちらも濃厚です。
ただ、3巻目がまるっと回想に使われてしまうほどシナリオ重視の人間ドラマだと読んでて思いました。
一人一人考え方が違うせいで、誰が悪いわけでもないのに分かり合えずすれ違ってしまう思いや
人間の醜い部分、嫉妬心や劣等感…それのせいで肝心なものが見えなくなってしまったりなど
考えさせられることの多い深い作品だと思いました。読んで損はないと思います。私は読んで良かったです。
桜が散るのを美しいと感じるように、苦しみで壊れそうな彼を美しいと感じてしまう、そんな作品でした。
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