不気田くん
」のレビュー

不気田くん

犬木加奈子

グロ気持ち悪いから愛の深みの物語へ

ネタバレ
2015年1月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 不気田くんをまさか電子書籍でまた読めるとは!知る人ぞ知る少女ホラー漫画の怪作です。

不気田くんの1巻は不気田くんがとにかくキモすぎます。笑えます。
沼から這い出てきたような見た目の初期不気田くんは性格もとことん湿っぽい奴で、彼が恋した相手に想いを寄せるのは女子読者に対するホラー要素でしかありません。
愛をくれ〜と女子限定で迫る不気田くん。
柄杓をくれ〜と船乗り限定で迫る舟幽霊みたいなもんです。

ところが話が進み犬木先生の絵柄と不気田くんのキャラクターが洗練されるにつれ只の妖怪だった不気田くんに少し感情移入出来る部分が出てくるんですね。変態異常者であることは変わりませんが。

そして3巻では不気田くんの愛を求める行為はホラーではなく人間の業を描き出すものへと移り変わっていきます。

私は鯛子の話が好きでした。
小学生の頃読んだ時はよくわかっていなかった、不気田くんの感じた不思議な安らぎや鯛子の想い。最後なぜ鯛子のとったあれらの行動で不気田くんのあれに変化が生じたのか、そんなことが大人になった今ようやくわかった気がします。

肉体はいつか滅びる。ならば触れ合いも子孫も意味はない。ただ純粋な精神からの愛はあり得るのか・・・?

ただのホラーから、愛について真剣に問うた物語になるこの作品。ぜひ読んで欲しい、読み返して欲しい衝撃作です。
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