秘めごとを味わって
」のレビュー

秘めごとを味わって

梅田みそ

2巻はずっと泣きっぱなし

ネタバレ
2025年9月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 紺くんはずっと自分の存在意義を探していて、それがいい事でも悪いことでも「自分がもっと頑張れば」良いと思い込んでいる生きづらい人でした。
自分の足で立てるようになるまでいろんな人達に利用されたり振り回されたり傷ついたりして、お父さんのために頑張って苦しい生活にも耐えたし、かかなくてもいい恥もかいたし、危ない目にもたくさん遭ったし、ようやく心を許せる人が現れたと思ったら真相はまた裏切りで……と、あまりにも報われない日々でした。自分の存在意義を母親の中に見出していたため、「役たたずだったから置いていかれた」という一言には涙が止まりませんでした。
自分のために生きることを知らない紺くんと、同じように自分がどう生きたいのかわからない水沢先輩。正反対の生い立ちをもつ二人がすれ違ったり理解が及ばない言動があったりすることは必然で、一度別れてしまうのはどうすることも出来なかったし、けれど再会したときの水沢先輩は「紺くんに会いたい」と自分で決められる人間になっていました。きっと今の水沢先輩なら、グラスが割れてしまった紺くんに「また一緒に見に行こう」と言えるはずです。
紺くんはずっと、たった一人、好きな人からの変わらない愛をほしがっていた。大好きだった母親から「頼りになる」という嬉しいはずの言葉が呪いのように彼の生き方を決めてしまった。けれど、だからこそ水沢先輩と出会えて、水沢先輩もそんな紺くんに会って変わることが出来た。これからは二人で補い合って、支え合って一緒に生きてほしいと、最後は温かな涙を流しながらページを捲り終えました。
とても素敵な物語だったと思います。わたしの心にもきっと「誰かの役に立たなければ」という思いがずっとあるので、紺くんな自分を重ねてしまったこともあると思いますが、心が救われるような物語でわたしは大好きです。
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