夜明けのポラリス
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夜明けのポラリス

嘉島ちあき

恋から愛へ

ネタバレ
2025年9月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 1巻の時点では、生徒×先生の甘いお話かと思っていましたが、次第に物語全体のテーマである「見えなくともそこにあるものとしての愛」へと移っていきます。
過去に亡くした恋人との約束を北極星のように捉え、縋るものとしていた由良先生に、高校生の煌星君はまだ子供で、その真意や根幹を理解することができないまま、2巻が終わり、2人は6年の離別を迎えます。
由良先生は6年の旅の中で出会った女性に「忘れたいことがあるのは忘れられないことと同じ、常に本当の願いは逆にある」と言われ、忘れたくないからこそ北極星のように縋ってきた恋人との思い出との向き合い方に僅かな変化が生まれます。そして煌星君も大人になり、きちんと由良先生を理解し向き合うことができるようになっています。3巻では、再会した2人が大人として改めて関係を再構築する中で、由良先生の心の中にあった願いは本当は何だったのか、2人で紐解いていきます。
昼間でも本当は同じ場所にある北極星。昼間は消えてしまうのではなく、見えないだけでそこにあるものです。過去の思いも約束も、忘れるべきものではなく今を形作るものだという煌星の言葉によって初めて、由良は、北極星が見えなくなってもそこにあると信じて生きていけると思えるようになったのでしょう。まさに、煌星はその名の通り地球を照らして北極星を見えなくする恒星・太陽であり、だからこそ、北極星が見えなくなり始める夜明けが訪れるということで、夜明けのポラリスというタイトルなのかなと思いました。本当に素晴らしい作品でした。
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