みいちゃんと山田さん
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みいちゃんと山田さん

亜月ねね

リアル。

ネタバレ
2025年9月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 広告で気になって、どんな話か解ってるのに、つい読んでしまいました。読書は日常から離れる楽しみの枠なのになあ。でも、それだけ魅力的な作品です。

みいちゃんは、自分が今の仕事に就くきっかけになった要因の1つの、学生時代の精神科実習中に出逢った患者さんにそっくり。
リアルな描写。弱さも強さも、素晴らしい解像度。救いの無さまで。あまりにも現実的で驚きました。

知的な遅れという言い方は、まるでいつか追いつくのではないかとの誤解をご家族様方に与えますが、そういうことは無いので、解った時点で、はっきりと未来の障害像も含めて、サービスも含めて、告知すべきじゃないかなあと個人的には思います。
特別支援学級とか、そんなことではなくて。
何かの枠に入った方が良いよとの言い方は、何かの枠から外れたよとの通告になってしまうので。
生きていくために、何が必要なのかを伝えられると良いのかなあと思いますが、それは目の前に無いものの話なので、そもそも想像力の無い、共感性の低い、つまりは、知的な力の無い人には理解が難しい話です。
この物語のみいちゃんの家族のように、ご本人だけでなく、残念ながら家族自体も知的な弱さを持つことは多い気がするので、どうにもならない場合も多々ありますね。

家族次第、家族というか、親権者次第で、こういう方々の人生は決まってしまうのだなあと思うと、人権という言葉の難しさを感じます。
障害がある方にも、選択する権利は無くてはいけませんが、選択する権利を持つ、本人でないその人にその力が無い場合は、どうにもならないことも多い。
しかも、本人じゃない、その選択権を持つ人のための選択になってしまうことが多いので、だいたい根本解決にはならない、先延ばし的な選択になることが多いし、もう、先も見えない。

よくある話を、妙な綺麗事でぼかさずに、よくきちんと描いてくださったなあとびっくりしています。ラストは既に見えた上でのストーリー展開ですが、最後までお付き合いしたいなあと思います。
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