このレビューはネタバレを含みます▼
この作品はカバーを見るだけでワクワクします。だって、『火の鳥』やら、キトリのシソンヌやら。メドーラのヴァリエーションの連続パセやら。『グラン・パ・クラシック』やらと、高名なヴァリエーションのアイコニックなステップが見れば分かるように描かれているから。でも、辛くなって読み続けられないでいます。
あまりにも刺さるから苦しい。例えば、「肘からゆっくり動いて...空気のように柔らか」い腕遣いほど、美しい物はありません。でも、「空気のように」に達することができる踊り手は稀で、これが欠けているので『白鳥の湖』の主役に留まれなかった才能あるバレリーナをたくさん見てきました。千花が一番で立つとき、膝が僅かに離れているので、彼女の身体の限界が見えてしまう。一方、空美のポーズはどれも伸びやかで美しく、バレエ的な身体格差の残酷なリアリティを見せつけられるのですね。
とはいえ、西洋的なバレエ教育の欠点もあからさまです。真直ぐな背中は不器用な踊り手を作ってしまうんですよ。S字カーブを保ちながら限界点まで背筋を引き延ばしていく。この方法論じゃないと、豊かな感情表現を可能にする自由な上体の動きは作れないのです。あと、小学校5年生でスワニルダとか踊らせるのも感心しません。これくらいの時は身体のコーディネーションをミッチリやってる方が後々伸びしろが出てきます。
それに、この漫画はローザンヌを到達点としていますが、私はローザンヌには失望しているのですね。ワガノワバレエ学校憎しみたいなコンクールだと思ってます。2016年に今はボリショイのプリンシパルであるアリョーナ・コワリョーワが落とされて、『眠れる森の美女』第2幕のオーロラのヴァリエーションをしくじったローラ・フェルナンデスがファイナリストとして残った時、ああ、出来レースなんだなと思いました。以来、ローザンヌは見ていません。
空美の人生も壮絶ですね。学校のイジメにも、性的虐〇にも屈しない空美。分かります。空美はバレエという修羅に囚われているから、他の不幸は無視出来てしまう。
バレエは美しくて残酷で、偶々身体性や感性が適合しても果てしない献身がなければ、本物にはなれない。
やっぱり、痛くて読み続けられません。