このレビューはネタバレを含みます▼
同作者様の悪役令息レイナルド〜のファンで、こちらの作品も小説投稿サイトで以前から拝見させていただいており、書籍化を大変楽しみにしてました!既出のストーリーに加えて大ボリュームの書き下ろしまであり、この二人の話がもっと読みたかったので滅茶苦茶感激です。本当に嬉しくて徹夜で読みました。
内容は、人の姿をしていながら空・海・陸に属する異能を持つ「竜」という種族が、古より島国である王国を守護し、王族に仕え軍の要を担うという世界観。
その竜の一族である飛竜のリアン(受)と海竜のヴァルハルト(攻)は、それぞれ空軍と海軍のエリートですが、もともと家同士が険悪な上に性格的に反りが合わないのもあって、軍部でも犬猿の仲で有名な二人です。その仲の悪さは顔を突き合わせるたび口喧嘩では収まらず、武器と異能を駆使した乱闘騒ぎに発展するほど(そして犠牲になる王宮庭園)
そんな二人が竜の生態と本能によって起きた不幸(?)な事故でワンナイトしてしまい、互いに意識し合うようになる中、軍の陰謀に巻き込まれてしまい──というお話です。
ワンナイト後も普通に嫌味と皮肉の応酬が飛び交う二人ですが、合同演習等で交流を深める中リアンがヴァルハルトへの底辺評価(ヤリ●ン不良軍人)を改めたり、一族のために見合いするリアンにヴァルハルトが嫉妬したりと無意識両片思いぶりが良き。
そして一族の陰謀を知ったリアンが空軍を追われ、海賊船に匿われた彼が葛藤しながらもヴァルハルトを巻き込むまいと一人で陰謀に立ち向かおうとする心情描写も、そんなリアンを追って彼への執着と愛を見せるヴァルハルトのスパダリぶりも大変良きです。特にヴァルハルトのスパダリが素晴らしいです。最初のワンナイトに至る過程では割と彼最低だったので(笑)
リアンも無自覚にもかかわらず、ふとした仕草や咄嗟に出た行動から相手への思いが感じられてグッときます。
また、そんな彼らを支えたり揶揄したり立ちはだかったりする脇役たちも個性的。皆良い味出してますが、特に孫にすら嫉妬する爺世代バカップルと謎多き副官ローレンさんが気になります!続編があればその辺の深掘りを是非……!あと個人的に肉食系美女のヴィアラ中将(攻の母)のファンです。
電子版書き下ろしでは、ケンカップルの成立過程で如何に王宮の景観の破壊と再生が繰り返されてきたかが垣間見えました。彫刻家さんたち頑張って……!