婚約を解消するとしても、一年だけ延期してください 二人を照らす青い残光《ブルーアワー》
青波鳩子/あばたも
このレビューはネタバレを含みます▼
作者さんの繊細な心理描写に心を揺さぶられます。
他作品でもレビューを書きましたが、それと同じく深く考え込んでしまうような、静かで重みのある作品でした。
今作品でも後悔する不誠実な男性キャラがでてきますが流行りのざまあ展開はありませんでした。そのかわり、フェルナンは辛く突き刺すような真実に、静かに絶望して、周囲に責められるより苦しい罰を受ける事になります。
再度想いがシャルリーヌに傾きジネットへの関心が薄れるフェルナンの2度目の移り気には、正直呆れました。
婚約者や先が長くない祖父から遠ざかる様子にも、当たり前にある事の有り難みに目を向けず、ぞんざいに扱う事が後にどんな後悔をうむか、彼のような不誠実な人間には大きな鉄鎚となったかと思います。
りんごや宝石など小道具の使い方もハッとさせられます。りんごは絆や楽しい思い出の描写に出てきましたが、病巣としても表現され背筋が凍りました。
この作品には辛い「真実」がありますが(ネタバレでもこれは書きたくない)素直に受け入れられた読者さんはどれほどいるでしょう…。個人的にはひたむきな彼女の優しさと強さにしばらく読み進める事ができないくらい涙がにじみました。
いいね