美しい彼
」のレビュー

美しい彼

凪良ゆう/葛西リカコ

4巻を読んで

ネタバレ
2025年12月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 今作を読んで前作が一つの区切りだったんだと感じた。
1番の印象は恋愛描写が少ないこと。平良の写真家の話が軸だと思ってはいたけど想像以上に少なくてシリーズで初めて性描写がないのも意外だった。それがなぜかを考えると、悩ましい彼のラストで平良が「清居、ずっと俺のそばにいて」って言ったからなんだと思う。悩彼を読んだときはついに平良が好きとかきれいとか一方的な言葉ではなく恋人らしい台詞を言ってこれからどうなるんだろうと思っていたけど、儘彼を読むとその台詞は1つのゴールだったんだなとわかった。平良と清居は付き合い始めてもお互いチグハグで噛み合わなくかったけど、儘彼の平良と清居は違う。平良は相変わらず清居を神様だと言ったり謎の儀式をしたりはするけど、オフが被ったとき清居が一緒にいたいと思ってくれてるかもと撮影を延期しようとする。平良と清居は分かり合えない部分はありつつも2人とも恋人として向き合えている。
清居が別居するとき「俺たちは別れない」と宣言して出ていくのは平良が「ずっと俺のそばにいて」と言ったからだ。恋愛作品でハッピーエンドを迎えたあと続編が出るたびに破局の危機を迎えてまた寄りを戻すのを繰り返すのはありがちの展開で今回も平良の環境が変わっていく中ですれ違う展開もありそうだが、凪良先生はキャラクターを大事にされていてご都合展開にはしない。先生のそういうところが前から好きなのだけど、儘彼でより感じられてもっともっと大好きになった。
読者が作品の中で読めるのは平良と清居が過ごす時間の中での一部であり、結果的に恋愛描写は少ないけどそれは2人の関係が安定したからだ。直接の描写はなくても、普段ちゃんと栄養バランスの取れた手料理を食べている2人がいちゃいちゃするために自堕落にピザで済ますのとてつもなくエロティックであり、行間の2人を想像するのはとても楽しい。食べる前に盛り上がってしまって、あとから冷めたピザかじって不味いねって笑い合ったりしてほしい。
この数年で凪良先生も美しい彼という作品も大きく変化があった中でまたこうして続刊が読めることは感謝しかない。平良と清居の恋は少し落ち着いたわけだけど、2人が夢や目標に向かって切磋琢磨していく姿は見たいので美しい彼シリーズはずっと続いてほしい。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!