春雷は、あきらめない
」のレビュー

春雷は、あきらめない

ひとのさみしさを温かく描く

ネタバレ
2026年3月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 「セ〜、やっぱなしで!」でハマった紅先生。温かく明るい世界観なのですが、それだけではない陰があるところに惹きつけられます。今作の主人公、朔夜は大家族のなか大事にされて育ってきたという背景描写で、本人もそれに支えられて頑張らなきゃと一所懸命にやりながら、でもどうしようもなくさみしい。この「さみしさ」をちゃんと描いてくれるのが紅先生だと思います。恋や性が、ドキドキする刺激的なものというより、温かい、安心できる、寂しさの隣にいてくれる何かへ至るものとして位置づけられている。この人にとってこの先に「家族」みたいなものがあるんだな、と自然に納得できる描き方。私にとっては紅先生の作品の、そういう人間らしいさみしさを、あたたかく真剣に描いてくれるところが好きです。ファンタジックなまでの拡大家族的描写が、かえって「人はここまでたくさんの支えてくれる人たちとの繋がりがあったとしても埋めがたく『さみしい』と思うものなのだよな」と切なく可憐に思いました。
読み手の胸のなかのさみしさや人を求める気持ちを、落ち着いて受け容れさせてくれるような素敵な作品だと思います。
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