これはきっと、恋じゃない
」のレビュー

これはきっと、恋じゃない

はなぶさ/黒瀬來華

潔いまでにテーマを絞った作品

ネタバレ
2026年3月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ さて、いきなりだがこの作品にざまぁを期待して読んではいけない。ざまぁは(ほぼ)ないからだ。
異世界の聖女はやらかした後全く出てこなくなるし、リディアに嫌な態度をとった女官や兵士やら民衆共が謝罪したとかもないし、村長は金くすねて姿くらましたままだし、アルファドの命を狙う神殿側についても殿下が何とかすんじゃねーかなぁという匂わせで終わり。

これ本来なら消化不良!伏線回収してない!と文句言うとこなのだけど、この作品についてはこれでいいと思った。
だってこの作品はそんなクソ共へのざまぁはテーマじゃないから。ただひたすらに、リディアという生き残ってしまった1人の少女の罪の意識と彼女の幸福を願う人たちとのお話だから。ざまぁはむしろ蛇足になる。

…すごいのが、クソ聖女(…と言いきれない程度には彼女にも情状酌量の余地はあるが)の顛末を「ここでは割愛する」と作中ではっきり明記してスパッと切り捨てたとこ。これ、なかなかできるこっちゃない。
それを実行する決断力と胆力よ…。

しかしそれだけでなく、こちらの作者様は別作品でも思ったけど心理描写ないし情景描写が上手い。なんだろう、はっきり書くわけじゃないのに何故かものすごく伝わってくるのよ、キャラクターの心情と感情が。

んでこの作品は1巻で完結っぽいのだけど、それが良いと思う。書こうと思えば続巻書ける部分は充分過ぎるほどあると思うけど、前に触れたとおりそれ書くと蛇足になりそうなのよね。ここで終わるのが一番美しい気がする。
リディアは「可哀想なリディア」ではなくなり、殿下や神官長に見守られながらアルファドと生きていく。快晴ではないけれど、長い雨が止み少し晴れ間が差し込んできたような、余韻の残る美しいラストでした。
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