蝉時雨が止む前に
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蝉時雨が止む前に

やまぐちにこ

行間を読む、間違いさがし作品

ネタバレ
2026年6月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ パワーワードが並びます。ヒモ、ヤバい女、終わりそうなカメラマン、男を好きだと自認のない男。
やまぐちにこ先生、出版社はギフテッドやカッコウの箱庭、転生したら森蘭丸などを排出しているところです。個性派ぞろい。
蝉時雨〜もヒメミコ先生のような独特の間があります。

クズな写真家、航×酒に弱い大学生、渉
おじから格安で借りたアパートの階段から見える、隣のボロアパート。色気のある男と女がイチャついてます。酔ったことで接点をもつ航と渉。作者さん粋ですね、主人公の航(コウ)は(わたる)とも読みますし。現状で単話3までですが、BLでなければ3Pもありえる、そんな色気が漂っています。
ここから、がっつり行間ネタバレ

航の住むボロアパートに通うようになる渉。大切に陳列されたカメラ、パネルにされた海の写真を見つけます。ですが、通ううちにそれは渉の目に触れなくなります。
突然訪れる女が航に、男にまで手ぇ出すようになったの、とからかいはじめ……女が着替えるクローゼットには航のカメラが仕舞い込んである風景。
航が飲む酒をトニックで割る渉。ここでも言葉のマジックです。"たったひとこと"とは、渉が気を遣わないための航の無言と、わかっている癖に(渉が寄せる好意について)何も言ってくれない航への抗議です。
そして女(由麻)は金魚は見たかと、渉に耳うちします。意味のわからない渉は、自分の前で平気で着替える女から目を逸し、部屋を立ち去ります。

そこから怒涛の展開です。
航は自分に向けられる、渉の視線を指摘して、その腕をからめとるのです。
数カットのベッドシーンなのになんだかガッツリ見てしまったような感覚に陥ります。色気ある航の湯だった体と渉の泣き顔。
3話を読むとさらにびっくり。犯してしまった渉のための消毒液、2度目の行為、風呂場でのシャワ浣、散りばめられたカットのみで、ふたりの間になにがあったのか?を予想していかないといけません。スラムダンクの最終回を回想……。
女が放った、金魚は見た? もうおわかりですね。
航の下腹部に金魚がいるんです。ワンカットです。
渉はなんど見るんでしょう。
逃げたいのに捕まりたい、認められないけど、惹かれるのをやめられない渉。
ラストまで気が抜けない作品です。

秋にふる時雨。夏の終わりのせみしぐれ、ふたりが秋を待たずに、離れることを選んでしまいそうで、切なくなります。
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