自殺島
」のレビュー

自殺島

森恒二

引き込まれる

2015年12月6日
生きる義務を放棄した人たちを島流しにし、生きたいならサバイバル生活をするしかない。そこから物語はスタートします。
生きるには衣食住が必要です。何もせずに手に入るわけもない。果物ひとつでは必要な栄養は満たせないし、屋根がなければ雨露も凌げない。
しかし、生活を確保しても重大な問題がある。法と秩序がないこと。せっかく築いた「財」を、また最悪の場合は、命さえも奪われることです。
法治国家では、法が抑制となり、また罪を裁きますが、それを専門として働く人々を育て、養う仕組みがあるからこそ成り立ちます。
争いたくない、かといって一方的に奪われるままでいいわけもない。出来るなら話し合いで片付けたい、しかしそれで全ての問題が片付くなら誰も苦労しない。法治国家の中でさえも。それでも争いたくないと願うのもまた人間。
この物語の面白いところは、そういった、人間が昔からずっと抱えてきた問題に、死のうとしていた人達が直面するところかなと思います。ただのサバイバル漫画でもなく、ただの死にたかった人が成長し希望を見出だす漫画でもない。
二つのテーマが深く絡み合うことで、人の心の深いところをえぐりだしているように思います。どんな風に結末を持っていくのか本当に楽しみです。
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