このレビューはネタバレを含みます▼
西田東さんの作品は本当面白い。
あったかくて可愛くて、たくさん笑えて、でもせつなくて。
本当、西田さんの作風&センスは私のど真ん中です。
今回は3つのお話が入った短編集。
表題作が約5割。
「もろとも」は異母兄弟のお話。お兄さんの方は、デキル人。好きな会社をやめて、親父の会社の社員を路頭に迷わせないよう必死に頑張って、親父の愛人の子供を面倒見て、愛のない結婚とは言え奥さんを大事にして(っと私には見える)、必死に必死に頑張ってるお兄さん。本当素敵です。西田さんは本当サラリーマンを書かせたら天下一品ですね。しがらみに縛られて、逃げ出したいけど逃げ出さず、時にはふと我に返りながら、でも食いしばって頑張る姿が素敵です。
一方その異母兄弟の弟は詩人で愛情というものを大事にしていて、お兄さんとはまったく逆なんですよね。癒し系。その癒し系の弟が、踏切の所で怒る所、本当良かったです。
合いそうで合わなそうな2人。その2人がすごくお互いを大事に思ってて。素敵なお話でした。
2話目は「仁義ナシ!」。
むちゃむちゃ面白かったーっ!!
ダメダメやくざと刑事のお話。
短いんですけど、テンポが良くて、むちゃむちゃ笑えて、楽しくって。ラストのコマは可愛くて笑えます。西川さんが書く泣き顔ってなんでこんなに可愛いいんでしょ。ダメダメやくざの関口、本当可愛いです。
最後は「聖なる男」。これも短いんですけど、良かったです。牧師と船が壊れて島に流されてきた男の話。牧師は過去の出来事への懺悔の日々でいるのですが、最後、結局同じ過ちを繰り返そうとしてしまうんですよね。過ちを繰り返そうとした時、読んでてちょっとかわいそうで胸が痛かったです。
一方流されてきた方の男は本当悪い奴。でもなぁんか素敵なんですよね。話の途中で牧師が飼ってた犬が死に、お墓に埋めようとしているシーン、男が死んだ飼い犬の墓標を割るんですが、最初は「なんて事を!」と思っちゃったんですが、「お前の魂は自由だ!」と叫ばれた時、なんだか泣きそうになりました。男は特に牧師の過去を知らないと思うんですけど、なんか無責任な言葉には聞こえず…泣きそうになりました。なんでこんなにあったかく、救われる感じがするんだろう。最後良かったです。あの牧師さんを男に受け止めて欲しい。救ってあげて欲しいと思いました。
西田さん、最高です!この作品も超おすすめです!!