白波の幻想
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白波の幻想

小花美穂

小花美穂作品の原点

ネタバレ
2016年3月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ ずっと読もうと思っていたものの、ついつい忘れてしまっていた『白波のイリュージョン』を、シーモアで買って読んでみた。もっと早くに読めば良かったとひたすら後悔するばかりである。
この本は、小花美穂作品の原点であると思う。『白波のイリュージョン』では、現実を受け入れられない統子が無表情になり主人公を認識出来なくなる部分があるが、その症状は『こどものおもちゃ』の紗南の人形病と似ているし、『ぼくとお嬢さま』のヒロイン愛美の性格も紗南と似ている。特に、『ぼくとお嬢さま』のキスしてお互いの歯が当たるシーンや、「好きだから(また)会える」と言うセリフなど、『こどものおもちゃ』そのものではないだろうか?
小花美穂作品の良いところは、どんなに悲惨な状況でも登場人物たちが明るく健気に生きているところである。また丁寧な心情描写も素晴らしい。これだけの内容でこの値段なのならば決して高くは無いのではなかろうか?私は購入して本当に良かったと思っている。先述の二作の他に、『7年目のシーン』『窓のむこう』が収録されている。『7年目のシーン』の薫の滑舌の悪いところは、モンゴメリの『赤毛のアン』の娘を思い出したり…
どの作品も、読み終えた後に清々しさとある種のカタルシスを感じる素晴らしい作品だと思う。今後も小花美穂女史を応援し続けたい。
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