青山月子です!
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青山月子です!

湯木のじん

色々気になるところはあるけど

ネタバレ
2016年3月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ あえて原因や過去の説明めいた描写はせず、とにかく今の月子と加賀美君の気持ちに焦点を絞った展開が、逆に背景に思いを馳せさせるというか、奥行きのある作品だと思います。
サクサク読めてもしまうけれど、是非じっくり読んでもらいたい。

私個人としては、「『愛』とは『記憶』」だと思っていて、それが愛の真理だと思っているので、
はじめから月子の母親が気がかりでした。(未婚ながら、自分の歳がどちらかと言えば母親側に近いせいもあるかもしれませんが)
自分が愛するひととの間に身籠り、産んで苦労もありながら慈しんで育ててきた記憶の連なり。
その記憶が確かにあるのに、自分の子供は(名前以外の)一切を忘れてしまって、でも同じ屋根の下で生活している、自分の事を形骸的にしか「母親」として見ていない目で…
序盤からの愛情がないとも見える母親の月子への態度から、その辛さの澱が感じられ、物語の終わりには少しでも救いがあることを願いながら読み進めました。
終盤の月子が思う母親への思いは、少し残酷なようでもあり、無垢な子供の素直な思いでもあり、作者が深く深く「月子」という記憶喪失になった少女の心を思いながら書いたことがよくわかるシーンでした。

肝心の加賀美君との恋愛に関しては、最近の少女漫画に比べれば所謂胸キュン度は低いかもしれません。
ですが上記の環境の月子がする恋愛としては、とてもいじらしく、応援したくなるし、加賀美君のめげなさは男らしくも映ります。この年頃の男子でこんな子いるんだろうか。そりゃモテるわ。

どっぷり恋愛ストーリーにハマりたい人には向かないかもしれませんが、じんわりと深みのある恋愛物語が読みたい人には是非お勧め致します。
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