砂漠の楽園
」のレビュー

砂漠の楽園

マリオン・レノックス/藍まりと

生きることや愛することに対する気持ちが◎

2016年8月13日
財産とは無関係に、生き、愛し、とても活動的。
その好感度抜群の明るさは、眩しいくらいで、彼の毎日をたった数日で劇的に彩り、互いの意識もヒロインたちが帰る頃には最高潮。

ハードな土地柄でもその環境にへこたれないヒロインと幼い妹。愛されずに生まれ育ち、生きにくい中を生き抜いてきている。リッチな親の恩恵は全く受けられずここまで来た。知人のひどい裏切りに遭った過去までも経てきた。

そこまで苦労したのに、生きることの讃歌みたいに逆境を跳ね返す姿を見せている。

前向きな二人は彼でなくても、大いに影響を受けるはず。親の死に因って二人が被りそうだった仕打ちには、見知らぬ人が居合わせて力になってくれた。また、彼は彼で辛く寂しい少年時代を過ごしたが、サポートしてくれた人の存在があった。
このストーリーは、冷たい身内よりも寧ろ他人の存在が暖かい手を差し伸べている。世の中捨てたもんじゃない、とばかりに。
思ってもみないほどに心強い人の善意が描かれることで、社会には敵も味方もいるという事実に気づかせてくれる。

HQに典型の、愛への不信・愛に臆病。そんな不信を抱いて臆病にもなっていた彼、周囲の人間の後押しにより、人間のよいところを信じさせてくれる存在により、前へ進んだ。

この話の特徴は、過酷な環境にめげないヒロインからのそのキャラに沿うかのような体当たりには応えられなかった彼ライリーが、思い直してヒロインを迎えに行くときの、周囲の動きの面白さ。みんなが二人を見る目は本当に温かいです。

なにより、妹がまだ幼いからこその、大人の理屈を超越した思いが効いている。

実に気持ちのよい一冊です。
いいねしたユーザ2人
レビューをシェアしよう!