身代わりハネムーン
」のレビュー

身代わりハネムーン

文月今日子/ジェシカ・ハート

自然の中で素顔を見せて相手を知り愛し合う

2016年8月13日
鎧を着ているような間柄に陥りやすい上司と部下という上下の硬直的な空気を、南の島の時間と環境が別のものにしてくれました。職場に帰っても、もう戻れませんよ、なにごともなかったようには。

頼まれて理想の新婚旅行に仕立てた本人が、私が行けちゃうの?、って驚きつつもその話に乗るわけです。それはそれでラッキーだとは思います。
ですが、新婚旅行として行けなくなった当事者片割れとして彼は、旅行そのものは「部下と」実行してしまいます。この前提あればこそのストーリーです。

ふと、それは瓢箪から駒の多いHQである故に、まことしやかなラブストーリーとして夢の世界を提示してくれたのだなと思います。

けじめを持ってる節度十分の社長。一線を越える際には、きっちり言葉で互いのことについての確認と同意求める提案となっております。出発前と旅行中がその趣を変えることは、読者的に想定内であっても、物語の中では、彼らの手順には説得力があります。何週間か過ごし、そのあとオフィスで顔をあわせますから、そこ重要な手続きです。

ひかれあいながら、このときだけの関係になることを惜しんでいる自分を押し殺して「出張」から帰ってくる二人。
ここまでとても巧みに読者にヤキモキを与える進行で、安定のストーリー展開。

二人が親密になっていく過程はとても楽しめましたから、エンディングに波乱はもとから必要を感じませんでしたが、社長の堂々とした告白は一番のけじめを見た気分になって、より手堅い決着を見た思いです。これで、ヒロイン退社なかりせば、パワーを持つものからの、いやと言わせぬ行為として、不適切と受け止める社員が出てきても不思議はありません。出張として出掛けたけれど、旅費精算は私費負担ですよね、これ。


上下関係がなくなってのシーンでクライマックス。

堂々としていて素晴らしい場面でした。
ハネムーン後の二人は、ハネムーン前とは丸で異なる理解力。チャンスを与えてくれたジュリアありがとう、ですね。
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