古城の恋人たち Ⅲ プリンセスの香り
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古城の恋人たち Ⅲ プリンセスの香り

ロビン・ドナルド/岡田純子

秘密を抱えて苦しんでいたヒロイン

2016年8月16日
国を離れて国に怯え、しかしその国を愛している、為政者一族の遠い血を引くヒロイン。
仕事を通じて出会う二人。
互いに惹かれるも、彼女は正直になれなかった。

復讐を恐れるヒロインの気持ちは冒頭から説明が入って理解できる流れ。王子のヒロインへの気持ちや、ヒロインから信頼されない悲しみも表される。
二人の愛し合う姿は、絵的にキレイ。二人とも美男美女でサマになる場面を楽しめる。

でも、私の目にはその王子サマ、終始どこかチャラいプレイボーイにも見えてしまう。出会ってからも判りづらい。ミステリアスに意図的に配されている様子ではない。

話の都合上ベタ過ぎな形で敵が登場。接近も方法もオーソドックスに適役然でやってくれていくなか、長く秘密を守り通していたヒロインの素性が暴露される場面があっけない。また、王子の身辺なのに警備手薄、怨みを抱く者の復讐心が割と腰砕け。

王子の気持ちを表すところは、登場人物が本気のはずなのに、読者として乗らされにくい。白っぽいコマの時に、心から振り絞るように本心を語っている描写は、重い場面のはずなのに、芝居がかった舞台俳優のようで浮いてしまっているように見える。
愛情描写よりも言葉に依存している感じが気になる。

全体としても、国というものが関わる話でありながら、その舞台である「国」を、「伝説」の場所に象徴させているだけで、進行上そこだけに絞られてしまったことが反対に軽々しい印象に落としてしまっている。

モデルが王子と結婚、だけでは済まなかった背後のしがらみ、二人の愛こそが乗り越える力であるが、この話は、そこではなく和解の宣伝材料に利用する筋運びを選択したのだから、最終二人は愛ある結婚だという示しかたをこってり(エッチシーンにはイージーに頼らずに)見せてほしかった。
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