家なき子へのプロポーズ
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家なき子へのプロポーズ

メイシー・イエーツ/さちみりほ

新しい明日を一緒に踏み出してくれた人

2016年9月7日
(彼の)その真の意図がどこにあろうとも、ヒロインは彼によって暗闇から抜け出すことができた。
親の愛を求めた悲しい子供時代を二人は合わせ鏡のように過ごした。それぞれの親への復讐を果たすことを彼が持ち掛け接近するまで、二人は自分達の親の影から逃れられない哀しい人生だった。

親のエゴで人生を棒に振りそうだったふたりは、互いのなかに安らぎの場を見出だす。動機を押しやり二人が夢中になりかけたときに、腹黒の親、再登場。

この話、ヒロインも彼も最低の親の元に育ち、その親たちは最後まで、それぞれ自分の子に"与える"ということをしなかった非道の鬼たちなのに、最後までその養育放棄の行為は報いを受けない。そこが、それが世の中ですとは私は割りきれない、憂さの晴れないところ。なんで子ばかり苦しまされて、身勝手すぎる親達はそのまま好き放題に生き続けられるのだ、という、やりどころのない怒りを読者のこっちは抱えたままで、話は終わってしまう。反省の場もなければ、裁きの場すらないのだ。

でも、彼が無一文になっても愛情一つで一緒になろうとするプロポーズは素晴らしい。ヒロインが、外に出てたくましくなったところも素晴らしい。

知り合いではなかったとしても、二人は戦友のようであり、彼にとってはヒロインの存在は愛憎入り交じった幼馴染みみたいなものだ。
この二人が一緒になったことは、最も安心な着地といえるだろう。

この二人こそ、互いの心の痛みに敏感で、辛い想い出からの傷の癒し方について適切な方法を見つけることができ、二人の失われた子供時代の挽回に同じ方向感を持てるだろう。

大団円、お幸せにと祈りながらその後の二人を垣間見せてもらって読み終わる。ヒロインは非がないから、このストーリー、彼サイドの動きで全て展開するが、その、彼の構想に、ヒロインは当初健全な警戒信号を頭では聞いているけれど踏み出してしまっている。それが、結果として、新たな人生に進むことが出来ることになった。
人生をあるところで人の手に我が身を委ねてみるリスクを取り、愛と幸せという果実をしっかり収穫できた、という塞翁が馬的人生ドラマ。
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