ハリウッド・光と影 Ⅰ イヴの誘惑
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ハリウッド・光と影 Ⅰ イヴの誘惑

星合操/キャンディス・シューラー

虚像の奥にある真実の姿

2016年10月17日
仕立てあげられた自分のイメージは自分を売り込むためだけのものだった。ヒロインの魅力に飲み込まれまいとする彼ゲイジはずっと、独り歩きした彼女の世間のイメージを彼女が実際に纏っていると思い込むことで自分を保とうとした。しかし眼を離すこともできない。

ヒロインは彼の視線を当初から全身に感じていた。しかしそれは、軽蔑の視線と受け取っていた。彼に対する意識から逃れることが出来ない。

互いにひかれ合っていた。
仕事は全うしたい。
彼も、根も葉もないスキャンダルに疲れていた。過去にも悩まされて今でもなおそれは彼の大きな痛みとなっていたから。

ヒロインの彼への気持ちは絶ち難かったが、どうすることもできなかった。
二人の素晴らしい時間はマスコミに引き裂かれ。

このストーリーではヒロインが一番大切にしているものは彼への愛とその日々の思い出、そしてその思い出の大切な証。
キャリアを捨てるなんて勿体無いと私は思った。何のために、恋人の危機にも寄り添えない職業を選択し、マスコミの無責任でいわれのない中傷にも耐えてきたのか。彼も飛躍と今後の成功を祈ってくれていた。
でもこれは彼女の判断。ヒロインは今後、どうやって食べていくつもりだったのか。

だからキャリアを、せめて中断という程度に納めておけばいいものをとの読み手の思いなど関係なし。尤も、彼は自分だけの女でいて欲しいようだから、一段落後復帰というのは厳しいかな。

別れても一時の恋として片付けられなかった。

実際にも兄弟では、上より下の方が人間関係の泳ぎ上手だったり、恋愛巧者だったりするが、本作もまさにそれ。弟達の方が状況がよく見えている。

この作品では制作仲間に一切悪い人がいない。悪いのは噂を書き立て、大衆相手にネタが面白おかしければそれで騒いで稼ぎまくるマスコミ。唯一にして最大の悪。彼の過去の女も、たちの悪い行動をとったが目下の敵でない。

好きな人が現れたら、その職業に関わりなく同じ、という目線で描かれており、かつ、女優が大衆の注目を浴びる、という側面も持っている事実も踏まえられ、浮わついた描写よりもヒロインの本気に焦点を当てている。

この騒動の幕引きとして、やっぱりゲイジは、別れた後も常に気にかけていたヒロインを捜して追いかけて来るのだ。

二人が警戒しながらも接近して次第に恋に夢中になっているのが見ていて美しかった。
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