はいからさんが通る
」のレビュー

はいからさんが通る

大和和紀

私はラリサの件では、敢えて少尉を擁護する

2016年11月1日
少尉自身の恋について、よくわからないという感想があったり、(おそらく、ラリサの所から、記憶が戻っても、なかなか紅緒の所に戻らなかったことかと思いますが)実際に、ラリサの件では、時々少尉が優柔不断として、非難されることがありますが。
しかし、私はこの件に関しては、敢えて少尉を擁護したいと思います。
だって、ラリサがいなかったら、少尉はおそらく、そのままシベリア監獄に送られていた可能性が高いと思われます。更に彼が負傷もしていることなども考えると、そのまま日本に帰還できず、死んでしまった可能性も高い。彼からしたら、記憶が戻っても、すぐに紅緒に名乗り出られない、せつない状況であるとはいえ、再び生きて紅緒と再会できたのも、やはりラリサの手厚い看護と保護により、生き永らえてこそだと感謝していたのだと思います。
それに、あの戦時中、ロシアの貴族が敵国の日本兵を匿うなど、かなり大変かつ、勇気のいることだったと思います。もし、ロシア皇帝や政府にでも知られたら、ラリサ一家が罪に問われ、大変な処罰を受けていた可能性が高いと思います。おそらく、一家揃っての命がけの協力がなかったら、無事にあそこまで、少尉を守り通せなかったと思います。
そのことだって、おそらく、少尉も誰よりもよく理解していたはずです。
それに実はラリサは、彼の戦死したロシアの異父弟の婚約者であり、不思議な繋がりがあった訳ですし。そして少尉は記憶が戻っても、すぐに紅緒の元に行こうとしなかったと非難される時がありますが、ではもう余命いくばくもなさそうな、命の恩人の女性をさっさと見捨てて、自分の恋人の許に行ってしまうような男性って、どうなんだろう?と私なら思うのですが。
自分の恋人にしか、優しくできないような男性の方が、いいのかな?みたいな。
要するに少尉は男性にも女性にも、優しい人なのだと思います。そして紅緒も少尉がそういう人だからこそ、好きなのではないかなと思いますし。彼は彼で、大変に苦しい心境だったのだと思います。ラリサも、最後まで婚約者と仲直りできないまま、彼を戦地へ行かせてしまったことも、最後まで心残りだったからこそ、生き写しの少尉を世話することで、心を慰めていたのでしょうし。三人の、それぞれの気持ちがせつないです。ラリサが身を呈して少尉を助けて死んだのも、彼の優しさが彼女に通じたからだと思いますし。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!