アポロンの誘惑
」のレビュー

アポロンの誘惑

スザンナ・キャレイ/岡田純子

他の誰にも恋をしたことのなかったヒロイン

2016年11月6日
神話の世界ギリシャで恋の魔法にかけられたかのようにヒロインが海に、そして島に自分を解き放つ。
幼時の余りに辛い体験が原因で恋がわからないヒロインが、妹は恋に浮かれて盲目になっているだけなのだと結婚に反対。心の傷が作り上げている壁は高い。
セオがその壁を破ってきた。自分からも望んだのだ。彼ならば大丈夫、と。

彼はモテるし自分は魅力ないし、遊びなら遠ざけるつもりだったのに、押せ押せでやって来られる。
ヒロインが終止符を打とうというとき、彼が芝居に乗せて動いた。

神話の世界が広がるギリシャの描写を眺めていると、山岸凉子先生の神話モチーフの作品世界を思い出した。静かに広がる海の情景がどこか官能的なのが、妖しい美しさと愛に溺れる二人のだけの世界を映しているようだ。夜の海の夜光虫は確かに幻想的ですらあり、ヒロインの裸体に付いているのを見て目を奪われるというのは、夜光虫の海を知っているのでわかる気がする。冒頭の港も雰囲気を伝えていたし、夜の海中キスシーンも美しかった。

ただ、二人の恋愛そのものは、普通のラブストーリー。場所がギリシャなので、らしい設定の地域色がそのストーリー進行に花を添えている。

勇気を出してトラウマにうち克つときは、丁寧なベッドシーンで、彼の思いやりが素晴らしい。

(ここから、後日記述)
ごめんなさい。読み直したら、セオの本心の分かりにくさが続きながらもヒロインへの熱意をも見せる、そのどっちつかずなところが、サスペンス的には盛り上がるけれど、二人の関係がただ肉欲的なだけにも思えてしまって、結局星を出し惜しみしました。
撮影という設定も、出演者が殆ど素人、というのもこのストーリーのご都合優先に見えてきて。

この叔父貴どののタイクーンぶりも、ストーリーに噛んでいるわけでもなく、ヒロインのトラウマ克服云々が、お話が終わってみれば大きな山でもなかったような気になってきました。あっさり壁を崩した感じになってしまったように思えてきました。
漂流時の夢の日々から、現実に返るのさえ、気軽なターンに見えてきました。乗船後に迎えに来る妹の彼も、あれでは姉が不安に思ってたわけだと納得しそうになるし。
そこへの「責任論」、責任ってどっちの科白よ、とも思ってしまったということもあります。
よって、すみませんが、一回目読後評価から、星ひとつ下げさせてください。
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