シチリアでもう一度
」のレビュー

シチリアでもう一度

サラ・モーガン/水沢友希

大切な日 そばにいて欲しい日 来てくれない

2016年11月11日
ヒロインにとってはすぐ駆けつけてほしかった時だったとしても、どれ程深刻な日だったとしても、彼にはその緊急性が伝わってはなかったのでしよ?
敢えて言わせてもらえば、それは、彼が「主治医の」見解を聞いている上での行動でもあったのだし、他のHQの男性みたいに直接ひどいことをいったわけでない。きちんとした説明を聞くまで、詫びる気持ちが少なかったとしても、それは仕方のない部分を感じる。何度目かでやっと重い口を開いてヒロインが説明してくれてからは、彼も事の大きさが理解できて、すまない気持ちとヒロインを大切にする姿勢を全面に出してきたではないか。

この話、ヒロインの育った環境でのエピソードの、余りに幼心に負担の大きかった記憶が彼との関係に影を差した格好だが、それは、彼の責任とは言えないだろう。そんな彼女を理解していくのは、その過去を知ってから。そこから二人の本当の始まりだといえると思うのだ。

私には、仕事を適当に済ませるかの後半の彼に、逆に密かな不安を覚えなくもない。彼の背負ってる会社の方に落とす影が大きくならないことを祈るばかりだ。
「反省」の後は、ヒロインに対してに寄り添うことにかなり時間も体も割かれているが、そんな企業経営者は早晩乗っ取られるだろう。ヒロインの親友である彼の妹がヒロインの身体の事情を知らないのもかなり驚く。ヒロインが言わなくて知らなかったとしても、流産・妊娠事件とか、そこまで天然でいられないと思うが。

絵柄は、線が華奢で人物が大人に見えない。性的描写にヒロインへの共感を持ちにくい展開。彼の強引めの何回かのキスに脈絡を納得しにくい。読み手としてどこか物語の中のシチュエーションに酔えない。突然さにバックグラウンドのコマ不足感、ホントに衝動だけなのか。

結局この話はなんだったの?みたいな読後感が抜けない部分あるが、雨降って地固まるストーリー。通常の流産でも、当人にしてみれば大きな出来事であるが、他人にはそうではない。大事なときに駆けつけてくれなかったことがあったからこそ、深い事情も話す気は無くなったとは理解できても、それでも、肝心なことを彼に説明してこなかったヒロインに、多くの人が流産後に取るリアクションを非難されるのは大変酷ではないか(私も流産は経験者)。

彼が可哀想に見えてしまうのは私だけなのか。

平たく見える画風が苦悩とか感情等の表現には損している。
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