大富豪に愛されて
」のレビュー

大富豪に愛されて

モーリーン・チャイルド/ハザマ紅実

心暖まるハーレクイン 許しと再生の物語

2016年11月12日
題材はHQあるある、中身は愛情が和解をもたらす温かいストーリー。許すことが全員をハピエンに導くソリューション。突然世話をすることになった赤ちゃんを、父親たる彼にも愛情込めて育てるよう仕向けることを通し、彼の愛情を喚起、大切な存在となっていくヒロイン。愛が彼に赦しを教え、復讐への執念を越えて、結果として親子再会も果たす為の接触点に彼がなる。

ビジネスの世界の敵に対する憎しみを捨て心を通わせることになる、その転換が、この話の主題のひとつ。彼を変えたのはヒロイン。

彼を父にするプロセスは、冷たいワンマン経営者が自分の会社を、信頼できる幹部に任せる経営スタイルに独裁スタイルから変えることになる。彼の生活に家族と暮らす時間の喜びが入ってきた。

人を信用することは難しい。それは、人間不信、女性不信のお金持ちが大量に棲息するHQドラマの主たるテーマの源泉でもある。
でもこのストーリーの、彼がヒロインを信じようとするシーンはなかなか。その心の格闘の末、誤解もあったものの、愛ゆえに長年の復讐心を乗り越えて見せてくれるのだ。彼が現在の地位を築き上げた原動力そのものだったのに。

許すこと、これもまた、人を信用する以上に難しい。そのテーマもやはり愛という基礎の上に成り立つものだが、男性の側にとっての許しを打ち出したHQは多いとは言えないだろう。

ヒロインのキャラが彼を癒していつの間にか最も強烈な感情をも克服してしまうのだ。憎しみは愛とは対極のもの、ヒロインの破壊力はその笑顔であり、素直に人の懐に入り込んでしまう人当たりの柔らかさ。
赤ちゃんに接するときは笑顔で、といわれ、彼が頑張るところは、このエピソードが醸し出している雰囲気のなつっこさを感じ取れるようになっていて、読み手のこちらもつられて笑いの中に入り込めるシーンだ。

ヒロインは生活力が高い。明るくて、そして女性のいやらしさがない自然体。でもやはり人を愛したら普通の一人の女性。なので、彼との関係を彼自身がどう思っているのか、そこは彼の言動に心が揺れ動く。

でも、ヒロインの夢であった父親とのことは、彼との誤解の元にもなったけれど、その反面、彼がいなくてはきっと叶うことはなかった。

「誤解が溶けてプロポーズ」型はHQ定番中の定番だが、これは、そこだけではないドラマを感じさせてくれる。
内扉絵の彼の顔が平たい。ベッドシーン強すぎる。
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