夢の雫、黄金の鳥籠
」のレビュー

夢の雫、黄金の鳥籠

篠原千絵

悪女印象が払拭できず、挫折しました

2016年11月16日
私は前からこの作者は悪女好きだと感じていたので。曽根原先生、ナキアなど、こういう悪女程、生き生きしているし。なぜか悪の限りを尽くしたナキアを、処刑しないままだし。作者にとっては、念願のトルコものだし、これも念願の皇后・母后として絶大な権力を振るった、好みの悪女ロクセラーナを、ついに主人公として描ける。しかし、いくら大御所漫画家が、魅力的に描こうとしても、私の中では、ロクセラーナは悪女の印象が拭いきれず。渋澤幸子の「寵妃ロクセラーナ」は、彼女が夫のスレイマン一世が寵愛していた、有能なバヤジットを策謀で退け、無能な我が子セリムを皇帝にしたのも、主にそうしないと我が子が危ういという母性愛から、という解釈にしたいようでしたが。しかし、私はそれだけではなく、彼女自身の権力欲というのも、大いにあったと思います。あの陰謀だらけと予想される、オスマン・トルコ後宮でのし上がるくらいの女性なら、当然、相応の強い権力欲も、備えているだろうと思いますし。実際に、ロクセラーナは相当性格も、強い女性であったようですし。それに、本作では恋仲になるイブラヒムって、最終的にロクセラーナと不和になり、死刑にされている人物ですし。二人の過去の恋愛設定及び、彼の性格は、ほぼ作者流のフィクションと思われ。そして例によって、彼もフェミニスト過ぎる感じで、後宮に女性を斡旋する人物としては違和感がありますし。それから、作者はロクセラーナは史実通りの悪女でもいいじゃん、くらいに思っていそうですが。それでは受け入れられそうにないため、いわば薬用のシロップというか。元は悪女ではなかったのに、愛する男イブラヒムに裏切られて、権力欲の権化となる、哀しい女にでもしたいのかと。私は作者の思惑が読め過ぎてしまったこともあり、何かしらけてしまい、途中で挫折。それに何より、スレイマンが、あり得ない優男の金髪美男なのも、すごく違和感があります。あと密通している時点で、既に悪女。皇帝と会う前からの恋と、美化すれば何とかなる感も、何か嫌です。イブラヒム程、成功欲も強そう、有能な臣下が、皇帝の寵妃と密通なんてハイリスクなことをするかな。私はもうこの時点で、この設定の無茶振りを感じてしまい。また、ついに、この作者も、こういう昼ドラみたいな話を描くようになったのかと複雑でした。イブラヒムとの恋は、プラトニックにでもしておけば良かったような。
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