ショーが終われば…
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ショーが終われば…

ケイシー・マイケルズ/さちみりほ

優しい彼、怖くなってその幸福から逃げた

2016年11月18日
余りに夢のように楽しくて逃げたヒロイン、ホリー。
いつまでも続くと思えなくて、彼が自分のことを好きでなくなったら、自分がどうなってしまうのか不安になって。

自分のしたことを後悔する。傷つけてしまったと。
二度と戻らないかもしれない彼のことを想って。
ここが泣ける。
ヒロインの後悔が胸に響いてくる。
このページのヒロインの心の言葉には私も胸が痛んだ。

幸せを感じるときは、これは今がピークなのかな、もうこの先こんないいことはないかもしれないな、などと私も思うことがあるタイプなので何となくわかる。

こんな素晴らしい人が私のことを?だなんて疑っているヒロイン。
モテそうな人に対して、自分が本気になったらおしまいなんでしょ、と思うのと似てる。

さちみ先生は引き込むのがうまくて、立ち読み部分からグイグイとファッション業界の華やかなバックステージを、忙しく働くヒロインを、ハプニングでてんてこ舞いな姿を、生き生きと活写。これは読もうと、立ち読み部分終了して直ぐに決めた。

会うと楽しい時間を過ごせる二人。でも、ヒロインは彼を邪険に・・・
これ、彼の気持ちを推し量ると、"通じなかったのか"、"理解が進んだ気持ちになったのは勘違いだったのか"、など、はぐらかされたよりもっと痛い肘鉄に感じたことだろう。

引け目を感じて引けてたヒロインが素直に気持ちを伝えようとの心境になったとき、もう取り戻せないと思ったものが還った。

人は顔で判断したがる。
彼もまた外見で損をしていた。
ヒロインの気持ちもわかるし、ストーリーとしても、モデルとみまごう彼が現れ、短時間でどんどん巻き込まれていく日々がよく描かれていた。彼の良いところをたくさん思い出す数々のシーンの回想の見せ方と、そこに添えられる言葉が、読み手の私にもひとコマ毎に心に効く。


一連の流れに飛躍もなく、会ったときから彼の何倍も好きだったのだとまで本心を口にできるようになった清々しいところまでの道のりを味わえた。

このストーリーの魅力は、ホリーの気持ちの表現力の素晴らしさ。ヒロインが、もう遅いかもしれないけど今動かなくちゃ、と決意したときに、急いで!なんて応援気分にさせられるのだ。

いいなあ、自分への完全肯定。

男性の横顔に華不足の箇所があり、美化か、別角度がいいと思う。
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