このレビューはネタバレを含みます▼
肖像画の謎の乙女とか宝剣など、所々魅力的に感じる設定は散りばめられてはいるが。ただ主人公カップルが魅力に欠けるのが致命的。ヒーローにしては影が薄いファルコとか、中途半端な感じのレオノーラの性格とか。また、最後の結末もやり過ぎ感が残り。最終的に女教皇にまでなるとか無理があり過ぎ。私は以前からさいとうちほというと、いかにも少女漫画の女性的な感性全開という感じで、全体的にいかにもキラキラの絵も作風も、ちょっと苦手に感じる所があり、特に読むこともなく。ただ、中世イタリアものということで、この作品だけは読んでみたことが。私も、肝心の主人公カップルのレオノーラとファルコが最後まであまり好きになれず。まず、何より、レオノーラのキャラが中途半端。勇ましいのかと思ったら、強引な美男のチェーザレに迫られれば、恋人のファルコがいながら、あっけなく身体を許して、彼との恋に夢中になってしまうし。そもそも、この話自体、作者が何よりもチェーザレ・ボルジアが描きたくて創った話なんだろうという感じ。またこのチェーザレのキャラ造形にも描き方にも、思い入れの強さも感じるし。実際に彼が真の主役かと思うくらいで、彼の存在にファルコが食われてしまった印象。ただ、やはり、さいとうちほ風というか、史実イメージより、情熱的な恋愛体質的チェーザレになっている感じ。一方、チェーザレと比べて、こちらのファルコの方は何か精細を欠くというか、テンプレート的な王子様キャラ。また、チェーザレがレオノーラのことを愛するのも彼が恋愛体質の情熱家にされていて、個人的にはかなり違和感が。更にその彼に愛されていた女性のレオノーラが、いろいろと微妙。私はチェーザレはあくまで野心や政治最優先の人物で、一時女性を愛することはあっても、けして溺れはしない方が格好いいと思う。全体的に確実に塩野七生の「女教皇ジョヴァンナ」と「チェーザレ・ボルジア」の強い影響を受けている。しかもその影響ばかりが目に付き、それを越える程の作品の独創性ある魅力も感じられず。