ポーの一族
」のレビュー

ポーの一族

萩尾望都

続編が出来ないものかと長年願っていました

2017年1月6日
妹のために姿を表さなくてはならなくなった、戻ってこなくてはならなくなったストーリーが、胸に痛かった。望んでなったわけではない哀しみを漂わせて、時の狭間に静かに生を繋いでいる。かつて人間だった頃のキラキラとした時はもう遠い夢の中。

怖い存在というより、永い一生を辛そうに生きているようにも見えて、生きるための彼らの業が切なかった。そして、やはり、わたしも、この作品には詩のような、すべてを説明しきらない一瞬の幻を少し見させてもらったような、余韻一杯で彼らの時間の中に迷いこんだままになってしまうのだ。

銀座の画廊へ近年個展を見に行ったが、絵で語るものを多くして、その上で言葉を使うとこうなる、といった、モノローグや台詞に依存しすぎない世界が、ポーの一族では展開されているとの感を強くした。

線の柔らかさも特徴的に萩尾先生調が出されて、トーマーも、11人ーもいずれも素晴らしいが、私は萩尾先生といったらまずこの作品を筆頭に挙げる。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!