あの夜の代償
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あの夜の代償

サラ・モーガン/高井みお

悲しみから救い出す王子になろうと決めた

2017年2月5日
98ページと、100ページが、この作品の私の感動ポイント。
望まれない子供であったことを苦悩の素とする設定は多いけれど、この話は、ヒロインが、そんな自分の育った環境を子供には味合わせたくない、その動機一本だけで彼への連絡を絶つ。
もしかしたら、どうなるのかは、まず試しの一歩踏み出していかなきゃわからないことでしょうに。。。


苦しませたくないと言いながら、ヒロインは息子を父なし児で育て、子どもが得られたかもしれない父子交流の喜びをも遠ざけてしまい、子どもが不憫だったと私は思う。父親の権利云々もあるが、まず子供のために動いてみるべきだったと思う。その後に、駄目だと判断すればその時はその時なのでは。

でも、世の中にはそんな一方的な理由で行動する人がいないとは言えない。苛っとするが、そういう話。

責任とって結婚、それが、「遊び」の代償、若さゆえの過ちというのは、新しくもない話。責任は責任で、腹を括って向き合うべきだったのに、最後まで責任を取りきれたとは100%言えないヒロインの父が、最も悪い。

このストーリーのヒロインは、はじめの出会いも、妊娠も、隠そうとすることも、とどめの、責任取る云々も、全て全てが、全部独りよがり。それを生育環境のせいにするのは、話の成り立ち上仕方ないけれども、彼も子供も一種の被害者。子供にとり悪い父に実際彼がなるのか先のことは分からない、賭けのようなものだ。順序よく結婚後に父親になっても、いい父になれてるかどうかはその時知れる、というケースもある。

忘れられない一夜の相手、それがために六年前真剣に探し回り、そしてなおその後も忘れなかった彼の熱意がそのまま、ストーリーを一本貫いている。彼が、ヒロインの突っ張りに怯まないのは、6年もかかった末だから今更慌てないのか、彼女の瞳の奥に見抜いた、「帰れる場所を探している/子供みたいに」が彼の心を留めているのか。

パーティに出てよかったね、と、結末から逆引きで喜べるが、探していたときには発見できず、HQあるあるの偶然の再会が二人の運命を動かす、というところに、出会えなかったかもしれない可能性のほうの高さを想像してしまう。

絵柄は私好みだが、彼のお母さんが年齢不詳で、ヒロインと並ぶと姉妹に見えるのは、一家の温かさや男性ばかりの家庭にはなんとなく違和感を覚えた。
ただ、彼を育んだ彼の生家はヒロインには神家族。
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