出会ってからはもう今迄の過ごし方はムリ





並外れた読書家のヒロインは言葉に敏感、言葉を繊細に扱う。同時に他人の容赦ない言葉に人一倍衝撃を感じる。書物を通じ大変な博識家であり、知性を磨いている故に思慮深く、長年の渉猟により考察力に優れ、調査・情報収集力も長けている。本来社交性のみならず、経営力と知力も要請される公爵夫人として資質があるのだが、華やかさや美貌を優先する連中に、ヒロインの魅力が解らない。
友人たちに彼が、彼だけが気づいてるヒロインの魅力を語る場面、読んでいて胸が熱くなる。誰がなんと言おうと好き、というストーリーが、私好み。
しかも、政治の話をするのが結構好きで、煙たがられた経験者の私は、このストーリーはツボだった。
死ぬつもりでいた公爵が背負っていた膨大な借金をサッと片付け、パーティで見事に仕切ったペネロペは格好いい。
そして、読書三昧が生活の全てだった人間が、人を好きになって知る苦しさ、切なさ。じいの言葉が人生の大先輩として深い。「人生は馬車の車輪のようには引き返せないんですよ。おつらければ先に進むしかないのです。苦しみのその先に」
じいの諭しとアダムの愛の言葉がしみる。泣いた顔を見せられず出られないヒロインも、恋を知って可愛らしい姿。
人を愛することで知った寂しさで悩む前、出会ったばかりのヒロインの、アダムに対する印象を心の中で「言えない。とても可愛かったなんて」と呟く場面も良い。ここに今後着実に成長する重要な気持ちの種が、既に出会ってすぐの段階で彼女の胸の中にあることが示される。
笑いをたくさん取りながら、二人が互いを愛する気持ちを大きくしていくプロセスに萌え要素ふんだん。
凄く意地悪な人物がヒロインを複数回不安に陥れ、不快な気分を撒き散らすが、却ってどれだけヒロインのことを好きになっているかを、アダムに自覚させるのだから、必要悪とは、これを言うのだと実感した。
じいのクライマックスでの動きは良かった。
駆け落ち婚を拾い物でやろうとしたヒロインの、咄嗟の人選が効いていた。

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