夏の塩
」のレビュー

夏の塩

榎田尤利/茶屋町勝呂

社会的弱者の宝石箱

ネタバレ
2017年2月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 穏やかで呑気な時間が流れたかと思うと、唐突に訪れる闇。そんな感じです。
かなりリアルで、程度の重い自傷行為があるので苦手と思われる方、疲れている時にはお勧めしません。


主人公の魚住は類稀な美貌の青年。いつも無表情。不安定な魚住は久留米の前でだけ、安心した様子。

前半はラブはなく、長めの考察のような部分が数回あり、退屈に感じました。


急に危険人物が出てきて主人公を「なぜ兄と一緒に自 殺しなかったのか」などと責める問答がしばらく続き、閉口しました。

終わりの方でようやく、愛の予感に進展あり。


DVを受けてるトランスジェンダーの子。


自分は何者なのか?自分の居場所を探して彷徨う。10代の頃に身に覚えのある考察。ひどく遠くに感じました。


なんで生まれてきたの?なんで生きなきゃいけないの?HIVキャリアでリストカットの女の子。突然訪れる永遠の別れ。

しかもサラサラと流れるように、次々に起こります。


美しく、痛い、痛い、痛い!

そんな物語、もう読みたくなかったのに。


気の置けない仲間との穏やかな時間。
次の瞬間、ぱっくりと口を開ける、魚住を取り込んだ死の闇。狂気。


怖い、怖い!凄く怖かった。


…それを乗り越えた先にあるもの。もう目を反らせない、かけがえのないもの。

感動的なラストではではありましたが、痛いの苦手なので…もう読みたいとは思えませんでした。
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