独身貴族に恋したら
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独身貴族に恋したら

岸田黎子/ハナ・バーナード

男と女の間の"何か"がないとうまくいかない

2017年2月23日
途中まで現実離れを感じて、買うの失敗したかもと思いそうでした。話の成行きを見守るのは構わないけど、子どもじみたストーリーに感じていたのです。恋の相談にかこつけて、相談している形の相手に時間をかけて振り向かせる方法は、実際成功例をよく聞きます。それだけ古典的。河原和音先生の楽しい作品「高校デビュー」の記憶も蘇ります。

でも、このストーリーは出発点ゼロのところから、彼のアドバイザリー機能がフル稼動。それは、既にもう心のどこかにときめき点滅有ったからこそ。
そしてその相手が結婚を考えていないタイプだからこそ。諦めて敢えてその外側に目を向けるしかない、子どもが欲しいヒロインにはごもっともな現実路線。
当て馬にされるお見合い的立場の外部の男性が、お気の毒というのかー。
この場合、ヒロインが悪者にならないよう、互いに成立しなかった形を取ってますが、それでも、下手にその気になってから突き落とされたらいい迷惑、というものです。

三度も付き添いを頼むのは、ここが、作り物の世界だから。そして、結局気になってデートの様子を見に行くのも、ハラハラドキドキよりも悪趣味の領域。好きだと自覚済みならともかく。。。

このストーリーで、私が気持ち持ち直して読むことが出来たのは、ヒロインがキスの相手として見ることが出来なかった男性の台詞。「一目合った瞬間から燃え上がるカップルもいる一方、何年経ってもその気になれないカップルもいる。いくら気が合ってもなにかが足りない。/ 僕たちの間にはその"何か"が足りないね」
好きという感情は理屈じゃないから、どんなに理想的な条件を兼ね備えた相手でも、その、"何か"がないと無理。

そうそう、沸き起こってくるエモーション。このストーリーは、恋愛感情が何たるかを表していてハーレクインの真骨頂を備えているクライマックスなのです。。

そこを、とても単純だけど最も深い最も大切なポイントを作品が突いていたので、細かいところに目をつぶって星の数は4つだと思いました。

特に、男性側の、最終コーナー、あれこれ腹をくくったところは、独身主義で鳴らした彼のドラマチックな陥落ぶりとのギャップが、軽いノックアウト。

二度のキスシーンがそれなりに効いたのと、彼のキスが絵になっていたこと、ヒロインの数々の天然な不適切な位の脱線行動などがストーリーを盛り上げたので、最終.1くらいです。
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