炎のドレスの誘惑
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炎のドレスの誘惑

岩崎陽子/ロビン・ドナルド

丁寧な風景描写と南十字星? 煌めく愛の火

2017年3月4日
星と植物で、その土地らしさを描いているところ、とても手を入れた細やかな仕上がりなので、絵の持つ美しさが、二人の愛の焔の在り方とマッチ。
ただ、初めの頃、ヒロインが彼の魅力をどこかで感じながら出自の負い目もあるとはいえ、前彼とは付き合っていたのだし、目の前の魅力になぜそこまで抗おうとするのが理解できなかった。

ガイドの無事の確認は言葉だけで済まし悪人も組織化されているはずなのに人数の重みはない。
ドレス姿が目に焼き付いたという彼、それがドラマに結びつかないストーリー。二人はひかれあっている、という双方の自覚の成長が、読者的にピンと来ない。
第一、島の最高権力者でありながら、説明されている地位と、ストーリー中の自ら動き過ぎるその行動力?が、人を使う立場にあることをまるで感じさせない。

結婚を意識した付き合いの前彼の方も、また、なぜ近づいていろいろ構うのかわからない今彼へのシフトも、その親しさ近さ甘さ大切さ等々殆どが感じ取れないまま、サスペンスのクライマックスに。

悪の組織のはずなのに一対一のようなあっけない戦い。
ただ、アクションはHQにしては切れがあって、現場で肉体が真剣勝負で取っ組んだと伝わる。こっちの描写の方が、恋愛感情の熟成描写よりも伝わるパワーがあるというのはどういうわけか。

ヒロインがキスをされるシーン幾つかのなかの二人の姿は素晴らしいので、コマ数は充分なのだが、ひかれあう二人というものの、キス以外のツーショット絵から視覚的に納得できなかった。
一線を越えるシーンも上手に美化されて充分で、二人が絡むシーンに一切の文句なしというのに、それぞれピンのコマになると、ただヒラ場です、といった感覚を抱いてしまう。

お迎えに行くシーンは、ストーリーの中での必然性ではなく、原作?(読んでないからわからないが)者の意思で用意されたストーリーのための「設定」(フリガナ:あざとさ)の印象を受けるほど、二人の間に効果のあった距離と時間であったとの説得力がなかった。

ヒロインに最後まで馴染めず、また、彼視点のように始まったストーリーも殆どその「誘惑された」感を充足させてもらえず、お姉さまや侍女もいたことはいたな、で、悪の組織が滅ぼされて終わってしまう。。。絵の良いところ豊富なためにこの星数だが、ヒロインの残念さや強引なストーリーなどが惜しすぎて何だかバランスが取れない。
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