公爵のプロポーズ
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公爵のプロポーズ

ルーシー・ゴードン/知原えす

何もかも犠牲にするくらいの愛だけが欲しい

ネタバレ
2017年5月13日
このレビューはネタバレを含みます▼ 好きになった人と結婚できればそれが一番だけれど、現実は人生で最も好きになった人と結婚出来るとは限らない。最も好きな人とは結婚は叶わなかった。その後この人なら結婚できると思ってしてみたけれど、合わなくなった。
とても理解できる流れ。いい人であろうとなかろうと、「好きな人」と「いい友達」とは、両者は違うもの。
ヒロインは心の中から好きだった人を追い出すことができなかった。凄く解る。一度好きになった人のことは、簡単に消えてくれない。
空白のとき、きっと幸せに暮らしているのだろうなと想像するものだというのも、自分のことのように共感できる。そして、幸せでいてくれたら、諦められたかもしれないのに、現在幸福な家庭を築いていない事実は、ヒロインの胸をざわつかせる。ましてや自分が離婚していたのなら尚更だ。
結婚時点では誰もがこの人とという気持ちで幸せを求めている。このままずっとお互いの笑顔を見続けたいと思っている。
でも、恋愛は頭でするものではないから、相手がいい人物であるかどうかとは無関係に感情が発生し、陥ってしまう。結婚の破綻のほうは、悪い点を理詰め出来れば幸いである。

相手の幸せを思って身を引いたつもりが、その幸せを相手が現実得られていないのなら自分がと思ってしまうのは道理、再び縁の有ったヒロインよ、おめでとう、と言いたい。

ただ、わたしは、公爵の名前も記憶に残りにくいくらい、このストーリー、公爵が公爵ゆえに領地内で発掘することができた財宝が、彼をお金コンプレックスから救えたことを、心のどこかでストーリーの筋立てが甘いところだ考えてしまう。これは何もかも犠牲にする愛を求めるヒロインのストーリーだから。

その何もかもなげうって、ということが人はなかなかできないからこそ、皆現実的な生き方をし、デフォルメ強いけれども、HQによく登場の財産目当ての男や女が、その場しのぎの口先の愛を得るのだろう。

公爵の横顔は好きだが、正面顔が好きではない。
子ども達は大人の事情を冷静に掴んでいるが、そうは言っても、大人達への態度の変わりようは感情的対応。
子ども達が親の離婚で大人びている中で、親たちは結構十代のような恋愛感情の現役でいる。
いくつになっても、あの時好きだった、という気持ちが甦る限り、愛の成就のためには何もかも「犠牲」、そして元夫も「犠牲」になったのだと言える。
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