ウツボラ
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ウツボラ

中村明日美子

鏡合わせのような世界観

ネタバレ
2017年6月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 登場人物を二極化して鏡合わせにする事で誰が誰か境界が曖昧に成ってゆく世界観が面白い。
私は秋山富士子が書いたと見せかけて、実は三木桜(浅xx=OL)がウツボラを書いたんじゃないかと思う。秋山富士子は溝呂木熱狂的ファン(ストーカー)で三木桜と出逢う前から手紙と小説を送っていたのだから、一見、小説を書いたのは秋山だと思うけど、一巻の終わりの方に「趣味で書いて人に見せたのはあなたが初めて」と台詞にある事から。三木桜(OL)が書いたモノを秋山富士子が勝手に送り、そして同時に桜自身も出版社に送った事、そして憧れの溝呂木と桜が接触した事、それらをきっかけに、桜がとある計画を立て、富士子が三木桜に化ける。二人は共通して溝呂木のファンであるが三木桜(OL)は富士子と自分の目的が違うことに気付く。三木桜は自身が死ぬ事によって溝呂木の作品の中で永遠になろうとする。富士子は自身が小説を送った事と入れ替わりをきっかけに三木桜が死んだ事を悔やみつつも、二人で立てた計画である「溝呂木にウツボラを完成させる事」を遂行。同時に富士子は桜同様に投身(溝呂木に完成させるため)、しかし未遂をした時に完全に桜とシンクロ(髪が桜の長さであったり台詞とか)する。だから一度失敗したが彼女のおかげで完璧になったと言ったのは心が桜になってるんじゃないかなと私は思った。富士子自身は本来純粋に溝呂木が好きだったと思う。それが桜との接触で歪んでいったようにも見える。桜のほうがより究極のモノを求めたというか。
いろんな考察をネットで見て人それぞれ解釈がいろいろあって、何度も読み返せる。
もう一度読んだらまた私の解釈も変わるかもしれない。
鏡合わせの様に増殖する真実の世界観が素晴らしかった。
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