静寂の月 Another
」のレビュー

静寂の月 Another

姉村アネム/森嶋ペコ

続編を!

ネタバレ
2017年9月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『もうひとつの結末』という言葉に若干不安はあったのですが、余りにも予想の遥か上というか下というか…をいく展開で、もう胸が引き絞られる位に痛み、読後数日は引きずりました。喬木からこれ以上無いほどの辛い別れを突きつけられても、もしかしたらいつか喬木が約束通りに(若しくは樹の身代わりとしてでも)迎えに来てくれるかもしれないと諦めきれず、その日が来るまではと、自分を傷つけるばかりの環境の中で必死に頑張る幹が不憫です。幹が長い眠りから目を覚ませば今度こそ喬木が迎えに来るんだよ、幹が望んだ幸せが待ってるんだよ、でもそこは読者各自が想像してねって事でハッピーエンドには遥かに遠いビターエンドという事なんでしょうけど、正直、ここからどうやったら『幹が望んでいた幸せ』に繋がるのかが想像出来なかったです。豪速球でデッドボール食らわされた気分のまま、一番ヘヴィな所で終わらせたまま、「続きは各自で」はキツいです。この終わり方ではバッドエンドに近いビターエンドかなぁと。喬木と樹も決して相思相愛の恋人同士じゃなかったとしても十年もの間を共に恋人として居たという事は、それなりに甘い時間や穏やかな時間もあったのでしょう。その現実があって、更に喬木は十年前も後も幹に対して決して言ってはならなかった言葉を告げてる。本当は幹の事をずっと愛していると告げて、目覚めた幹と共に過ごしていったとしても、幹の心の深い傷や『自分は樹の身代わり』という根差した思いは消せないだろうし、喬木の事を心から信じる事はもう出来ないと思う。それ位に喬木が樹と共にあった十年は長い。恋情ではなくても好意はあったであろう相手と十年も傷の舐め合いをしていた喬木は良くも悪くも『普通の男』で、すぐに揺れるし流される。そんな喬木がこの先幹の信頼を取り戻す為に何十年もの間を誠実に真摯に幹だけに向き合っていけるとは思えない。樹も然り。幹に信じて貰えないという自業自得の生活の中で疲弊した時に、また互いに慰めを求めそう。恋人関係は解消出来ても精神的な傷の舐め合いや無意識の親密な接触は続きそうだし、逃避としての恋情の絡まない体の関係も持っちゃいそう。幹が更に不幸になる未来しか想像出来ないからこそ、作者さんには幹と喬木が幸せになっている未来まで書いて欲しい。でも、正編に対してのパラレルワールドという位置付けや作者さんの発言等から察するに無理なんだろうなぁ。
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