蜜の島
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蜜の島

小池ノクト

その昔は人はこのように生きていたのかも

2017年11月5日
全巻一気に読みました。殺人などありますが、読後は犯人が誰かとか動機がなんだったとか、その理由よりも、今の自分の中にある当たり前だと思っている感覚がいつから生まれて果たしてそれは正しいのかとか、人類が今の社会を形成する上で得てきたもの、失ってきたものは何だったんだろうとか、そういったことを深く考えさせられました。ジャンルとしてはホラーだったりミステリーに当てはめられるのだと思うのですが、それで括るのは少し違和感を感じるような、もっと哲学的な意味合いを持った話だと思います。きっとその昔、ヒトはこの島の人のような価値観、ヒトは社会の一部であり、自然の一部であるという考え方を持っていてそれを実践して生きていたのではないかと。現代の社会のように「わたし」「自分」を強く意識した競争社会ではなく、共生して助け合って生き延びていこうと考える社会、そんな生き方が昔はあったんじゃないかと。そんなことを思わせられる作品でした。セリザワさんの「心がない」と台詞がありますが、私は「わたし」に対しての固執がないという意味合いで受けとりました。しかしどうしても上に立ちたい、人より優位にありたいと思ってしまうのも人間の本能だと思うので、統率者もおらず、皆が対等に協力することで村を存続させていた点では奇跡の島だったのではないかと思います。そこは現実にはあり得ないかなと思いました。
セリザワさんが最後までかっこよかったです。
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