誘惑された夜
」のレビュー

誘惑された夜

ミランダ・リー/渡辺直美

画力ありすぎてハーレクインにもったいない

2017年11月19日
ハーレクインの「はかないキスに涙を添えて」で知った渡辺先生の素晴らしい絵を、ここでまたもたっぶり堪能させてくれる作品。細部まで、建物外もその内部までも、実によく描かれていて見て楽しめる。
進行するストーリーの中の空気や感覚も、自分を静かに二人の近くに呼び寄せてくれて、嘘臭さがない。それでいて、どこか二人のストーリーを第三者として冷静に見つめさせてくれる。それは、ヒロインが浮わつかず、さりとて冷めすぎてもいない、大人であるから?
二人の関係は、この始まりで大丈夫なのか?、との小さな不安をよそに、彼のリードが揺るぎなく、そこに波乱を求める人にはこういう運びかたは拍子抜けすることかもしれない。しかし、その拍子抜けするほどの素直な愛の表現が彼の誠意を伝えてくる。
ヒロインも出逢いの裏事情をすぐ伝える。彼の発するまっすぐ貫くような気持ちが、次第に形になっていく様が、私には、この話の個性に思える。彼の素晴らしさは、全ての言動、佇まいに表現された、と思った。
先の読めない関係に自ら気持ちは抑制的に、と押し留めておこうとするヒロインの気持ちに共感するし、父親的に完璧に振る舞える彼のキャラがヒロインに深く食い込むのもよくわかる。満点なのだ。
自分を読み手として以上に、この話は、ヒロインの冷静であろうとする姿を通して、期待を過剰に盛り上げない。
一晩で燃え上がりそうになった出逢いから、彼の心が言葉で語られても、実のところはどうなのか、離婚をめぐる本心が読みきれない。
この付き合いが何処に進むのか、ヒロインは自分の心がわかったものじゃない。相手は深入りしてはならない人、との疑念を全く抱かせないシーンが散りばめられる。もう男性はいいわ、と思ってるヒロインに、彼は迷いなく進んできてくれた。

うわぉ、クリスマスシーズンに、最高の相手が現れ、いい家族ができたとさ、という話。

わざわざ「sea of love」の結末をググりに行ってしまった。

蛇足ながらー。
私は、日本語には少々こだわりがあって、作品中「そうゆう」「こうゆう」などと書いてあるのを見てしまうと、「そういう」「こういう」に直したくてたまらなくなる。そこだけは安っぽく見えてしまって品格を下げている気がする。
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