是-ZE-
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是-ZE-

志水ゆき

不死身の男 和記の生き様 泣ける壮大なお話

ネタバレ
2018年2月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 人間界に言霊師と紙様が存在するエロティックファンタジー。「言霊師」は三刀家一族が持つ特殊能力で、ザックリいえば言霊師が死ねと言えば相手を殺す事が出来る負の力を持つ人。その代償の身体的ダメージを身代わりとなり全ての災厄を引き受ける存在が「紙様」。紙様は天寿を全うした言霊師の骨と紙を原材料に「人形師」が製造する。

言霊師と紙様はバディの様に生活する為、主従関係からの恋愛関係がこの作品の見所になっている。

物語は育ての親の祖母が亡くなり天涯孤独となった一般人の七川雷蔵が家政夫として和記邸にやって来る事から始まる。そこにはイチャつくカップルが自由に暮らしていて。屋敷の主人が人形師の和記で言霊師と紙様が共同生活していた。祖母の愛情豊かに育った雷蔵が和記達に刺激を与え…。話は二巻ごとメインカップルを変え展開される。

1〜2巻は雷蔵×紺
3〜4巻は玄間×氷見
5〜6巻は守夜×隆成
7〜8巻は近衛×琴葉
9巻は彰伊×阿沙利
10〜11巻は和記

最初の雷蔵と紺のエピソードで言霊師と紙様の特殊性が把握出来、カップル達それぞれ背景が違いバラエティに富んだラブストーリーを堪能出来る。

そして最後の和記のターンになり今までの長いラブストーリーは和記の為の話であった事に気づきその構成力に驚いた。

死ぬ事を選ばせて貰えなかった和記がそこで出会った力一という男性。三刀家最強のカリスマ的存在で豪放磊落という言葉を思い出させてくれたそんな男性。力一には阿沙利、近衛、真鉄の三人の紙様がいて。阿沙利と近衛の痴話喧嘩の歴史がわかるとまた読み返したくなる。

常に厭世的でエラそうで嫌なヤツだと思っていた和記の過去。彼が言霊師 力一と対等に生き生きとしていた時に、彰伊の父に襲われ彰伊を守る為に力一と真鉄を失う。絶望の中の力一の遺言。タイトル「是」の意味。彰伊と琴葉 兄妹の関係や阿沙利が女王様的存在の意味や紙様の「白紙」の怖さの意味などなど、ずっと靄がかかっていた事が明らかになる。

力一と真鉄を失い絶望した不死身の男 和記の願いを力一の血縁者達が叶えてくれたストーリー。真鉄の再生の結果はこちら側の判断に委ねられたけど、奇跡を信じます。最後の和記の笑顔の写真で美しく終えたストーリーは、涙無くしては読めずホント感動的で何度も読み返せる素晴らしいお話です。雷蔵×紺が影薄なのはちょっと残念なのよね。
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