このレビューはネタバレを含みます▼
幼少期に実の母に捨てられたトラウマをこじらせ、母親より女を優先している(ように見える)女性をターゲットに犯罪を犯す千石。きっとこのストーリー上にない犯罪もこれまで数々あるんじゃないかと感じさせる。彼は母親を恨んでるようでいて、実は与えられなかった母からの愛情を超絶欲している。なので母親に相応しい相手を探し続けて、ついに見つける。長年の苦労?が実って理想の相手を手に入れた達成感と理解しがたい妙な安堵感からか、自分の犯罪を妻にしれっと暴露。この男の精神構造の描写が更に異常さを醸し出していて上手いなと。あっけない死に様が、俯瞰で見ている読者にはいい気味だと映る。そして、お腹の中の我が子を犯罪者の子供にしたくないという思いから、男の骸を秘密裏に始末する妻。母の立場を優先した女ということで、まさに千石の理想像で締めくくられた。これは千石の物語。ヒロインに感情移入せず、ただただ、母に愛されたかったこじらせ男のストーリーを追うのです。この後生まれる子はその理想の母に育てられ、今度こそ千石(の遺伝子)は母の愛に包まれるのです。めでたしめでたし。ブルブル。