このレビューはネタバレを含みます▼
お姫様と王様のありきたりなハーレークイン小説ではなく、ちょっと歴史好きでも満足できそうな重厚な仕上がり!
原作はフィクションなんだろうけど、夷狄が常に襲ってきて人種も宗教も複雑に入り乱れているブリテン島ならでは、のキャラ設定です。
作画に惚れ込んで購入しましたが、時代考証が想像以上に面白く課金に悔いなし。支配者ローマ人系統のイングランド髪色と、大柄で赤毛のネアンデルタール人の骨格、髪色の対比で反目し合う両国を端的に表現しています。家族で共通チェック織を羽織りブローチで止めるとこも細かくて良きです。
作画にリアリティあるので「かつては戦争と愛を天秤にかけるこの葛藤が、本当にあったのかも知れないな」と考えさせられます。
また、バトルの描き方がところどころ北斗の◯ぽくて、中年読者は良くも悪くもちょっとドキドキしました。
追記:小説日本語訳読んできました。英語の原本読んでる途中です。コミカライズで服飾や時代考証については少々改変されてます。原作刊行の94年当時の価値観と今の価値観の相違なのか、HQ特有のオラオラヒーロ味がほぼ全部抜かれて無毒化されてます。イングランド側が行った目を覆うような残虐行為は割愛され、なぜヒーローが和平交渉とラストの救出作戦に命をかけたのかがボヤけました(そこで伏線回収)。ヒロインがちょいワガママ令嬢から見事なレディに成長する過程もだいぶカット。二人の「コイツは憎き敵なのに何故こんなに惹かれるのか、ぐぬぬ」溢れる絡みも四、五箇所カット。あの葛藤と緊張感を捨ててしまうのはもったいない…素晴らしい絵なのだから世界的に売り出せないのかな。兎にも角にも、作画の坂東先生のロマンチックなイメージが溢れる作品でした。