このレビューはネタバレを含みます▼
とあるアセクシャル、アロマンティック、うっすらXジェンダーの人間です。
セクシャリティを通して、チカちゃんが自分や他人の【あり方の本質】を一歩ずつ学んで、気づいて、確かめて…という過程が、自分のセクシャリティ自認までの内容と重なる点がたくさんあり、共感の嵐でした。
当事者として例えるなら、人類の99%から「美味しい!食べなきゃ損!」と言われている食べ物を口にしてみたら、なぜか自分には無味無臭にしか感じられない。なんなら美味しそうにも見えない。でもみんなは美味しそうに味わっている。なぜ? みたいな感覚で。
さらに同じセクシャリティでも、「最初からそれを食べる必要性すら感じないから絶対に食べない」人もいれば、「食べられないけど、せめて美味しさの秘密や味の正体だけでも分析・考察したい」人もいます。
私はどちらかというと後者なので、チカちゃんの人の本質を知ろうとする姿勢に親近感が湧きました。でも後者は【根っこが人好きで好奇心旺盛】な面もあったりするので、悪気ない距離の詰め方で誤解されやすい点もリアルだな〜と笑
チカちゃんたちの動向を見守っているうちに、なんだか追体験した気分になり、「私もたくさん考えて迷って揺さぶられて、それでもよく向き合い続けたよね…」と、自分を認めてあげたいと思えました。チカちゃんたちが向き合う度、価値観の違いで傷ついた記憶ごと癒やされたというか、後半は泣きながら読みました。
また、登場人物みんなのセクシャリティが単なる紹介やレッテル貼りではないところも良かったです。
もはやセクシャリティを超えて、【自分は何を大切にしながら生きたいのか】という問い。
あえて安易に解決させずに大事に抱えたまま、各々が柔軟に真剣に自由に模索していく描かれ方が素敵でした!