このレビューはネタバレを含みます▼
前作の良さが引き継がれておらず、ただ残念だったなという感想です。
怪盗セイント・テールは世界観の中で実際に起きていることと、登場人物らの心情が絶妙にシンクロして造りあげられている素晴らしい作品です。
例えば芽美は怪盗である正体を隠してアスカJrと幸せな鬼ごっこをしていますが、ストーリーを重ねるにつれて芽美は「正体を明かすわけにはいかない、だけど好きになったアスカJrを振り向かせるため、自分がセイント・テールであることに気付いてほしい」ともとれるような乙女心を垣間見ることができます。
セイント・テールの正体を隠すということと、芽美自身の「素直に言えないけど気付いてほしい」という恋心を隠すことが重なっているわけですね。
セイント・テールは自分自身なのに、アスカJrは芽美ではなくセイント・テールばかりに夢中になっていることから、芽美がもう1人の自分であるセイント・テールに嫉妬している場面も多く見受けられます。
アスカJrの視点から見れば、芽美は最初は嫌味を言い合うだけのどうでもいい友達のような存在でしたが、セイント・テールとの幸せな鬼ごっこを重ねるにつれ、芽美のことを無意識に意識していくアスカJrの姿が印象的です。
アスカJrは芽美のことが好きになっていった。ただ、素直に認めたくないという思春期の中学生らしさがうまく表現されています。
セイント・テールの作品の素晴らしさについては、こういったキャラクターたちの気持ちや想いを間接的にうまく表現して読者や視聴者に届けていたことだと思います。
子どもの頃は複雑な心理描写まではわからなかったですが、それでも毎週木曜日の19時半にはワクワクしながらテレビの前に座っていました。
大人になった今見ても違う視点で楽しむことができますし、改めて素晴らしい作品であったなと実感します。
セイント・テールgirl'sにはこういった細やかな表現が全くもって欠けており、当時のワクワクを期待していただけに、本当に残念でなりません。
例えばポケットモンスターのように、時代が変わっても愛されるようなアレンジをセイント・テールgirl'sにもしてほしかったです。
このままでは勿体ないので作者を変更して再チャレンジしてほしい作品です。