このレビューはネタバレを含みます▼
壮大なお話でした。それそれのチームのエピソードも面白く(時には切なく)、ぐいぐいと引き込まれていきました。伏線も数多く張り巡らされ、それを執筆何年も立ってから回収する田村先生の手腕には脱帽します。男性が描くサバイバルものと違い、髪や肌のお手入れや生理のことに言及するなど女性ならではの視点もおもしろかったです。
ただひとつ残念で、そうしても納得できないのが安居の処遇です。あんなに可哀想な子(まだ18歳ですよ)はいません。
花は親に生き残りスパルタ教育を施されて愛されて育ち、極悪非道な花の父は「娘を愛した立派な父親」で、その特権で娘のボーイフレンドもチームに入れておこうかなって...。で、夏Aはその特権階級の人たちを守るためにあそこまで過酷な教育をされたってこと?
外伝で、花がどうしても安居が怖いのはわかる。でも「怖いんだよ! 近づかないで!」って....。「そっとしておいて欲しい」とでも言って欲しかった。ちさちゃんが木の枝で安居を獣のように追い払おうとする描写とか、ひどすぎ。真摯に謝っている者を赦せなくても、それこそ被害者だから誰かを傷つけていいわけじゃないでしょうっていうセリフを思い出した。
安居とある意味信頼関係を築いていた嵐も花カワイイでほぼ無関係を装い、他の夏Aのメンバーも自分たちのしたおことを棚に上げてしらんぷり。あゆに至っては桃太郎を実験台にしていたのに、桃太郎はあゆと共に住むのはいいんだ。安居だけがハブられて断罪され続けるのって、不公平感が拭えない。安居の味方は涼しかいないのに、まつりみたいな女がいたら逆に安居の孤独感が増すでしょうに。どこまで安居を虐めれば気が済むのか。
今までの冒険譚がとても面白かったのに、外伝の安居の不憫さしか記憶に残りませんでした。そもそも、このサバイバルSFに性的トラウマエピソード必要だった? 花と安居の間は対立だけで良かったんじゃ無いの? それでもじゅうぶん面白かったと思うだけに残念。本当に読後感が最悪で、可哀想な安居のことを想って外伝を読んだ夜は眠れませんでした。