このレビューはネタバレを含みます▼
1巻に比べて評価が真っ二つ。1巻が神すぎたんだろうな。その期待値を持って2巻を読むと少し肩透かしを喰らう人がいるのも分からなくはない。でも、面白く無かったってよりも、自分が思ってたのと違うって低評価が多い気がする。
ジーンってまだ20歳そこそこなんですよ。20歳から見た34歳っておじさんです。ジーンが30歳ならまだしも、現状に満足してめでたしめでたしで終わる年齢じゃない。
夢に続きがあると知ったら、その足は止められないよね。ジーンの覚悟はそこだったんだもの。アーミッシュ以外で深く知った人なんてまだトレヴァーしかいないんだから。そこで落ち着いてしまうほうがおかしい。
それが若さってもんだと思います。
でも、一部の読者はそれを許せない。ジーンは薄情だって思う。何でもしてくれた優しいトレヴァーを捨てるなんてあり得ないし、最後は結ばれる2人を見たい。何も無かった自分を引き上げてくれた人の恩に応えないのかと。分からなくはないけれど、それってアーミッシュの呪いのよう。
トレヴァーはそうじゃなかった。「してあげた」なんて、露ほども思わない。むしろ、自分の人生で一番大切なものをジーンから受け取ったとすら思っているのかも。対等に、ジーンの魂を見てる。だから全てを捧げ、ジーンを解き放った。そこにジーンの覚悟とトレヴァーの覚悟が繋がる。
トレヴァーは可哀想ではないと思う。全てを捧げようと想うほど愛せる人に、一体どれだけの人が巡り会えるだろうか?
吾妻先生は御涙頂戴の恋愛物語に出来たはずなのに、2人の気持ちに真摯に向き合って、曖昧にせずきちんと描ききったと思う。
そして、誰も死なせず、ジーンという名前の運命の上にまた2人を立たせたんです。それからの話は誰も知らない。だけど、一度は終わってしまった2人にまた光が見えている。それは紛れもない事実。
もし、先生が2人を終わらせるつもりなら、そもそも再会はないはず。老いは思い出を抱き、若きは大志を抱き、永遠に混じらない道の先に、また巡り合った2人。
10年に一度出るか出ないかの、名作だと思いました。
これは人間の物語であり、時を超えた大恋愛の物語だと。
深く読むか、表面をとるかは、読者の力量も問われているのでは。