このレビューはネタバレを含みます▼
12巻までよみました。
ニナはアズと出会って孤独から救われ、セトはニナと出会って孤独から救われた。
“星の力”により再びニナが孤独に陥った時、今度はセトが救ってくれた。
心を閉ざし自分を守っていたセトや、自分の“星の力”に恐れ怯えたニナには、「自分」がある。
「自分」であるからこそ苦しみ、だけど「自分」があるからこそ立ち上がれる。
だけど、アズには「自分」がない。
王子の身代わりとなり、国のために生き、国のために死ねと、「自分」であることが許されなかったアズ。
そんなアズは、ニナを欲することで初めて「自分」を自覚し、ニナを守るため王にまでなった。
しかし、その感情がニナの持っている“星の力”によるものだとすれば、ーー「自分」がないアズーー空っぽの自分はそれを否定することができない。
ニナを守るために王になったのに、王であるが故にニナを苦しめる立場になってしまった。
空っぽの自分から、脅威となるフォルトナから、逃がす(追放する)ことでしか、ニナを守ることができない。
離れることしかできないーーそれもまた紛れもない愛情だと思うし、それこそ「自分」がある証ではないだろうか。
ニナからもらったフィタ(組紐)をそっと箱にしまい(11巻の最後)、一人孤独に茨の道を歩むであろうアズが、どこに辿り着こうとしているのか。
ニナやセトがアズと再会する時、何が起こるのかーーー願わくは、3人とも幸せになってほしいと思う。
《追記》
アズがニナを守るために逃がした(追放した)と解釈したのは、1.ソルに護衛を頼んだこと(ニナが失踪しちゃったけど)、2.セトがニナを追うのを黙認したこと、3.ムフルムをスタービアに追放したこと(大事な存在は遠ざける)からです。解釈が違っていたらすみません。あと、2巻に出ていた「剣と盾」が象徴的で、ここからセトは一途で強い愛情(剣)、アズは切なくて深い愛情(盾)なのかなとも思っています。